やがて床に散らばったガラス片の半分ほどが片付いた頃。
多夜がRe:bidoに入ってきた。
「多夜さん、乙っす。……あれ、紫藤さんは?」
「後処理中」
「紫藤さん自らですか……。で、どこのヤツらでした?」
「さぁ」
「え?吐かせたんじゃないんですか」
「吐かせる前にリョウが壊した」
「ああ、理解っす。紫藤さん、相当ブチっすね」
どうやら男たちは全員掴まったらしい。
シドは男たちの後処理をしていて、相当怒っているらしい。
二人の淡々とした会話から、断片的に情報を拾った。
とりあえずシドはまだ当分ここに帰ってきそうにない。
ふいに視線を感じて、目を向けた。
目が合った瞬間、多夜は「女は?」と、それだけ野間に尋ねた。
「殴られただけっす。大きな怪我じゃなさそう」
「………」
「今日は、帰します」
野間がそう言った途端、多夜の尖った耳先がピクリと動いた。
「駄目だ」
「……言うと思った。多夜さん、急がないでください」
「………」
「それは悪手だ。絶対にいい方に転びません」
「………」
「断言します。今じゃない」
「野間」
「……はい」
「女は帰すな。いいな?」
「………」
何の話をしているのか、さっぱりわからなかった。
とにかく、私は帰っちゃダメらしい。
多夜はそれ以上何も言わず、店を出て行った。
残った野間は、どこか申し訳なさそうに掃除を続けていた。


