「……お前は」
口の端に垂れた雫を服の袖で乱暴に拭った、そのアオイの表情は怪しげだった。
夜の闇の中、その鋭い目つきは光っているように見えた。
「このままだと、引き返せなくなるぞ」
「……何の話?」
「私はずっと見ている」
「何を……」
「この、シトウの街を」
まただ。
またアオイは、わからない言葉で私に何かを警告してくる。
「引き返す気がないなら、いい」
「………」
「でも、そんなツラでシトウを歩くな。街が汚れる」
どういう意味だ。
もっとちゃんと、わかるように教えてよ。
口を開こうとすれば、アオイは「たぶん、頃合いだ」と呟き、立ち上がる。
「帰るの?一人じゃ危ないよ。私送っていくから」
「送られるのはお前の方だろ」
「どういう……、」
アオイが言い放った直後、遠くの方からバイクの音が近づいてきた。
どこから。後ろから?
振り返れば、そこには見覚えのある黒くて大きな二輪車。
「カナコさん!一人でリビドーを出ないでください」

