「カナコッ!!」
その声に、地面を舐めるようにして顔を上げる。
「シド……」
シドだけじゃない。
ドタドタと複数人の重い足音が、こちらに向かって急速に近づいていた。
緊張の糸が切れて、「はあ、」と息を吐き、肩を落とす。
……助かった。
シドは駆けつけるなり、すぐに私の身体を抱き起こした。
声をかけようかと思った。
けれど、口を閉ざした。
「………」
シドの目が、血走っている。
小刻みに震える手が、私の頬をそっとなぞった。
男に殴られたばかりのそこは、指先が触れただけでツン、と痛みが走る。
思わず顔をしかめた。
すると、シドの顎がギリッと強張る。
こめかみに太い筋が浮かび上がった。
そんなシドが、とても恐ろしくて。
思わず、ぎゅっと身を固くした。
その瞬間。
大砲のような怒号が鳴った。
「──……多夜ァァア……!!!」
ビリビリと震える、空気。
シドのその叫びを、いつの間にか傍に立っていた多夜が「ああ」と静かに受け止め、走り出す。
風を切った音のあと、たくさんの足音が猛スピードで駆け抜け、多夜の後に続いた。


