余所者-よそもの-【 2 】



「……ま、前にさ。一つだけ教えてって言ったの、覚えてる?」

「………」

「私は答えたのに、まだあなたは答えてくれてないよね」


――『待って、一つだけ教えてほしい』
――『……だったら私も一つ教えてほしい』

AnBarの前で、露天商から取り返したカメラを返したとき。
彼女の質問には答えたけれど、私はまだ質問を終えていなかった。

女の子はそこでやっと足を止めた。


「なんだ」

やっと振り向いてくれた彼女に、私の口元からは自然と小さな笑みがこぼれた。


「………」

けど、どうしよう。
何を質問しよう。

質問はたった一つだけ。
一番聞きたいことを聞くべきだと思う。

彼女に聞きたいことはいっぱいあった。
だけど、どれも一言の質問で収まりそうにない。

私はあの時、何を聞こうと思ってたんだっけ。


「話さないなら帰る」

「……あ、待って!」


よし、決めた。

「名前教えて?」

「……はぁ?」


女の子はあからさまに顔の輪郭を歪めて、馬鹿か?って具合の心底呆れた顔をこちらに向ける。

だって仕方ないじゃない。
呼び止めたいのに、私はあなたの名前を知らない。