どれくらい経っただろう。
「そろそろヤバい!ズラかるぞ!」
「この女はどうする?」
「連れて来い!」
寒気がした。
身体の上の重しがなくなり、呼吸は楽になったのに、息ができない。
「立て」
髪を掴まれ、無理やり引っ張り上げられた。
でも、身体に力なんて入らない。
薄目を開けば、「さっさと立て!」と、頬を拳で殴られた。
ゴツッ、と鈍い音が、耳の内側で響く。
一瞬目の前が真っ白になって、かと思えば、チカチカと無数の星が泳ぎだす。
力の抜けた私の身体を、男は荷物のように肩へ担ぎ上げた。
逆さまの視界に、地面が流れていく。
男が走るたび、肩に押しつけられるお腹が苦しい。
うえっ……とえずいた拍子に、口に詰められていた布切れがボトンっ……と地面に落ちた。
そばに、室外機が見えた。
……ここは、木の扉のある細い路地のあたりだ。
やがて細い路地を抜け、角のバイク屋の立て看板の隅っこが見えたころだった。
「やべぇ、もう戻ってきたっ」
「走れ走れ!!」
「ちょ、待てよ!女は!」
「捨てていけ!!」
そんな声が聞こえて、すぐ。
──ドサッ!
冷たいコンクリートの上に、身体が放り出された。


