それから。
夜も深まった、静かな深夜。
私はぐっすりと眠ったシドの腕をすり抜け、ベッドを抜け出した。
一睡もせず、彼が寝入るのをじっと待っていた。
音を立てないように慎重に、静かに移動して、服を着直す。
途中、シーツが擦れる音がして、ビクリと心臓を跳ね上げながらベッドを振り返ったけれど、シドは熟睡している様子だった。
荷物をバッグに適当に詰めると、一人リビドーを出る。
スマホで時間を確認すれば、まだ深夜二時。
AnBarはまだ営業している時間。
早く自分の部屋に帰って布団の中に丸まりたいけれど、今帰ればサンコンやバンが居る。
今は顔を合わせたくない。
私は痛む頬をなぞって、ゆっくりとシトウを歩いた。
細い路地を抜け、シトウの大通りに出る一本手前の筋に差し掛かった時だった。
――カシャ。
深夜の喧噪に紛れて、小さなシャッター音が鳴り響いた。
顔を上げれば、一つ結びの女の子。
こんな時間に、一人で……?
私と目が合えば、何事も無かったかのように通り過ぎて行こうとするので、慌ててその後ろ姿を追いかけた。
「ねぇ……」
「………」
「ねぇってば」
「………」
逃げようとはしない。
かといって、私の呼びかけに応える様子もない。
女の子はただ自分の一定の歩調を崩さないまま、真っ直ぐにシトウの街を歩いていく。

