床に散らばったガラス片の半分が片付いた頃。
入口のドアが開き、多夜がリビドーに入ってきた。
「多夜さん、乙っす。……あれ、紫藤さんは?」
「後処理中」
「紫藤さん自らですか……。で、どこのヤツらでした?」
「さぁ」
「え?吐かせたんじゃないんすか?」
「吐かせる前に怜(リョウ)が壊した」
「ああ、理解っす。相当ブチっすね」
男たちは全員捕まったらしい。
シドは男たちの”後処理”をしていて、相当怒っているらしい。
二人の淡々とした会話から断片的に情報を拾って、とりあえずシドはまだ当分ここに帰らないということだけを理解した。
ふいに視線を感じて多夜を振り返ると、彼は私を冷たい目で一瞥して、「女は?」と、主語なく野間に投げかけた。
「殴られただけっす。大きな怪我じゃありません」
「そうか」
「今日は帰します」
野間がそう言った途端、多夜の声色が鋭く変わった。
「ダメだ」
「言うと思った。……多夜さん。急がないでください」
「………」
「それは悪手だ。いい方に転びません」
「………」
「断言します。今じゃない」
「野間」
「……はい」
「女は帰すな。いいな?」
「………」
私の話をする二人の空気は極めて不穏だった。
自分がこれからどうなってしまうのか、何もわからないまま。
多夜はここを出ていき、残った野間はどこか申し訳なさそうに掃除を続けていた。

