今日は土曜日。
サンコンとバンがAnBarを出て行くと、私は一人、いそいそと支度を始めた。
いつもの入浴セットに加えて、今日は翌日の着替えと、メイクポーチ。
普段よりも多くなった荷物を持って、深夜の街に出る。
──『じゃあ土曜の夜は絶対来い』
シドとの、約束。
私は露天街とシトウの、なんとなくの境界線になっている十字路。
その裏手にある、人通りの少ない場所まで歩いた。
「お疲れっす」
そこで待っていたのは、黒の大型バイクに跨った野間。
『AnBarの前には来ないでほしい』
野間の送迎に注文をつけたのは、三日前のこと。
シドに呼ばれ、Re:bidoで身体を重ねた、その帰り。
この、人目につかない場所を指定させてもらった。
間違っても……AnBarの誰にも、この関係を知られたくない。
後ろ暗い気持ちで待ち合わせ場所を一方的に決めた私に、野間は『いっすよ』と、快く応じてくれた。
「メット被ってください」
「ありがとう」
大型バイクの後部座席。
野間の手を借りて、やっとのことで乗り込む。
「んじゃ、しっかり掴まっててくださいね」
私にはヘルメットを被せるくせ、野間はヘルメットなし。
野間の肩に両手を乗せると、バイクのエンジン音が路地裏に響き渡った。


