ほっとしてキッチンに入り、飛び散ったバターを拭いて、置きっぱなしだったフライパンを洗う。
さて、調理再開。
腕を捲ったところで、ふと視線に気が付いた。
「どうかしましたか?」
腕を組んだユキが、キッチンの壁にもたれかかってじっとこちらを見ている。
「いや、ホントに料理作ったことあるのかなと」
「あります。……さっきはドジしましたけど、大丈夫ですから」
「………」
怪しむ目。
どうやら信用されてないっぽい。
まぁ、一度やってしまったものは仕方がない。
ユキの視線を感じながら、調理を再開した。
見られていると、なんだか作り辛い。
でも、そのおかげか、さっきみたいに記憶に気を取られてぼうっとすることもなかった。
カチャカチャとフライパンを振って、あっという間に完成。
二つのお皿に綺麗に並んだ、きつね色のオムライス。
一人小さく拍手をする。
ダイニングテーブルに運び、ユキと一緒に食べた。
「どうですか?」
「うん。ちゃんと旨いね」
柔らかく目元を下げたユキ。
──『やっぱカナのオムライスは旨いな!』
そんな彼の顔を思い出した。
けれど、不思議だった。
今はどうしてか、それほど悲しくなかった。


