肩で息をしているシドは、相当頭にキている様子だった。
怒りの矛先が自分でないにしろ、その迫力に気圧されてしまって声をかけることができない。
遅れて一つの足音がこちらに向かって伸びてくる。
見れば、それは野間だった。
「カナコさん!?」
隣に野間が立てば、シドは無言で立ち上がり、彼に私を預ける。
「………」
「……了解っす」
何も言われずともシドの指示を理解したような野間は、その場に立つ私の背中をそっと支えた。
自分の足裏の感覚が地面に馴染むまでの間に、シドはもう、ものすごい速さで後を追って、あっという間に背中は小さくなった。
「……。カナコさん、リビドーまで歩けますか?」
「うん……」
野間の肩に掴まり、歩く。
リビドーに着けば、野間は「あーあ……」と大きな声で嘆いた。
倒れたチェアを起こしながら「死人が出るやつだ」と、きっと私に聞かせない程度の小さな声で言ったけれど、うっかり聞いてしまった。

