星降る夜に、あの日のキスをもう一度



 戻るとちょうど夕食だということで、先にシャツを返した後、ドレスをいったん部屋に置いてからダイニングに入ると、アンジェラは様変わりした空間に目をしばたたかせた。
 森で摘んだらしい花があちらこちらに活けられ、さりげない飾りが部屋をより美しく彩っている。何より全員がこちらに注目しているので、アンジェラはコテンと首を傾げた。

「お誕生日、おめでとうございます!」

 一斉に言われたことで、かあっと頬に熱が上る。

「え、あの、これは」
「今日は先生の誕生日でしょう。お祝いですよ」
「アンジェラ様に内緒で準備させていただきました」
「さあ、お席についてください」
「アンジェラママ、きれい! それシーツなの? すごく素敵! ねっ、パパ」
「あ、ああ」

 椅子を引いてくれたコンラッドに礼を言い、おとなしく腰掛ける。まさかみんなが誕生日を祝ってくれるとは夢にも思わなかったアンジェラは、皆の温かいまなざしにじんわりと涙が浮かんだ。

「ありがとうございます。驚きましたけど、すごく嬉しいわ」

 どうやら意図的に隔離されていたらしいことに今更気付く。
 夕食は今日買った野菜なども使われたうえ、最大限美しく盛り付けられていた。
 風呂に花が浮かべられていたのも、きっと祝いの意味だったのだろう。

(どうしよう。泣き出してしまいそう。最近涙もろすぎるわ)

 アンジェラの心は温かく満たされていて、どうしようもなく幸せだと思った。
 今日は隣に座るコンラッドが、テーブルの陰でアンジェラの片方の手の甲を軽く叩いたので、空いているほうの手でその手を挟み込んだ。

「アンジェラママ、神話の本から出てきたみたいだわ」

 食事の間、メロディとライラが興奮したように即席のドレスを褒めてくれる。

「学生時代に、仮装パーティーでこんな感じの恰好をしたことがあるわ」
「仮装パーティー?」

 首をかしげるメロディとエドガーに、どんなパーティーだったか説明する。

「すごい、私も入学したらそんなパーティーをするかしら?」
「確かに面白そうだね。そんな行事があるなんて考えてもみなかった」
「エドガーも在学中に帰れば機会はあるだろう」
「そうですね。なんだか早く戻ろうって目標が出来ました」

 ニカッと笑うエドガーに、アンジェラは「ぜひ学生時代は経験してほしい」と言った。同世代だけが集まる独特の空間を一度は経験してほしいと、心から思う。

 果物を使った繊細なデザートまで堪能した後、メロディたちが交代で風呂に向かう。
 その様子を見ながらアンジェラはふと、夜空を眺めたくなった。コンラッドに少しだけ外にいる旨を伝えようと思っていると、ちょうど風呂からシドニーと二人で戻ってくるのが見える。

「星ですか?」
「ええ。ちょっと眺めたくなって。ほんの短い時間ですわ」
「それなら屋上に行きませんか? 私が使っている部屋から屋上に上がれるんです。きっとこの辺で一番空に近い場所だ」

 一番空に近い場所だという言いまわしが気に入り、アンジェラは頷いた。窓から見た空は晴れていたから、屋上なら遮るものがなくて気持ちがいいだろう。

「私も一緒に見てもいいですか?」

 エスコートするように差し出された手を取り、アンジェラは
「ええ、もちろん」
 と、微笑んだ。