星降る夜に、あの日のキスをもう一度



 結局服のお直しはライラに任せることになったものの、今は夕食の支度などがあるので夜中、もしくは明日になってしまうと謝られてしまった。
 仕事を増やして申し訳ない気持ちでいっぱいなアンジェラに、文句はまったくない。むしろ夕飯は自分が作ろうかと申し出たものの、今日はライラの得意料理なので任せてほしいと断られてしまった。

「でも、お直しができるまでのお召し物に困ってしまいますね」

 ライラの言うとおり、今のアンジェラは着替えの類を持っていない。それはメロディ以外の全員がそうだ。
 このままシャツを借りたままでいたとしても、丈はアンジェラの臀部(でんぶ)がギリギリ隠れるくらい。このまま一枚で過ごすことは不可能だし、さすがにコンラッドを半裸にしておく気もないアンジェラは、予備のシーツを貸してほしいとコンラッドに頼んだ。

「シーツですか? 構いませんが、まさかそれを巻いてその辺を歩き回るなんてことは……」

 訝しげなコンラッドに、「大丈夫です」とアンジェラは笑った。

「巻いて歩き回るつもりですが、けっして見苦しくしないとお約束します」
「まあ、それでしたら」

 コンラッドの耳が少し赤いような気がしたし、なぜかシドニーやエドガーまでが微妙に視線をそらしている気がするものの、アンジェラは気にせずニッコリ笑って部屋に戻った。
 自分の荷物から安全ピンに似た自作ピンをいくつか取り出していると、ライラがシーツを持って来てくれる。こちらのシーツはかなり大きいので問題なしだ。

「エドガー様がお風呂の支度をしてますので、先に入浴をしたらとのことです」
「あなたやメロディは?」
「お疲れでしょうから、今日はお一人でどうぞ。護衛はエドガー様がついてくださいます」
「わかりました、ありがとう」

 露天風呂までは防御壁があるものの、入浴するときには誰かが囲いの外で見張りをすることにしている。今はエドガーが風呂の準備のついでにしてくれるらしい。
 アンジェラは皆の好意に甘えて、一人ゆっくりと湯の中で体を伸ばした。エドガーがいい香りのする花を浮かべてくれたので、かなり優雅な気分だ。

 風呂から上がるとシーツを体に巻いていく。考えなくても手慣れた感じでひだを折り、ピンでとめることが出来るあたり、自分では覚えていないはるか前の人生ではこんな格好をしていたのかもしれない。

(日本人だった頃なら、古代ギリシャローマ風だと思うかしらね)

 シーツの色が白だけど、厚みがあるので透けてはいない。
 髪は編むのではなく高い位置でポニーテールにした。

「エドガー、お待たせ」

 外に出ると、エドガーが何度か目を瞬いたあとアンジェラを上から下までじっくりと眺め、楽しそうにニヤリとした。

「これはこれは。月の女神風ですね、先生。高い位置で髪を結ってるせいか、普段よりもさらに若く見えますよ」

 その言葉に噴き出しつつ、聞きなれた感じのお世辞に「お褒め頂き光栄」と笑った。