星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 館に戻ると、裂かれたドレスを見たメロディとライラがオロオロするので、アンジェラは余計に申し訳ない気持ちになった。

(本当に不注意だったわ)

 怪我がなくてもまわりにこんなふうに心配されるなんて、思ってもみなかったのだ。

「大丈夫よ。針と糸は持ってますから、ササッと直してしまうわ」

 二人を安心させようと明るく言うアンジェラの後ろでコンラッドが、
「貴女は裁縫が苦手でしょう。ライラに任せなさい」
 と言うので首をすくめる。

「アンジェラママは、お裁縫が苦手なの?」

 まだママと呼んでくるメロディに、アンジェラはバツが悪い思いをしながら「実はそうなの」と認めた。大抵のことは人並みにこなせるアンジェラだが、針仕事だけは本当に下手くそなのだ。

 どうして彼にバレてるの? と考えたアンジェラは、昔暁の狼のシャツにできたかぎ裂きを直したとき、その出来になんとも言えない曖昧な笑顔を浮かべた彼の顔を思い出した。

(だって、あの時は他にできる人がいなかったから!)

 しかもかぎ裂きを縫うのは大変なのだと、恥ずかしい思い出に顔から火が出そうな思いでいると、メロディはなぜか嬉しそうに「へへっ」と笑った。

「メロディは何か嬉しい?」
「だって、アンジェラママが可愛いんですもの。ますます大好きになってしまったわ」
「まあ!」

(すごい。最上級の殺し文句だわ)

 またもやメロディの笑顔に心臓を撃ち抜かれる。さっきだって怖かっただろうに、この子が気にかけているのはアンジェラのことなのだと気づき、アンジェラは柔らかく微笑んだ。

「わたくしもメロディのことが大好きよ。さっきはよく頑張ったわね。あんな場面で悲鳴も上げないなんて、そうそうできることではないわ。本当に偉かった」

 逃げるために父親に抱きかかえられる間叫ばないことも、ましてや大人しくジッとしていることも子どもには辛抱だっただろう。

 期待するように少し首をかしげるメロディの額に軽く口づける。

(本当に可愛い子)

 甘えるように抱き着くメロディの髪を撫で、アンジェラはしみじみとそう思いながら、彼女にかけていた幻視の魔法を解いた。