星降る夜に、あの日のキスをもう一度


 剣を構えたコンラッドが鋭い目で周囲を見ながらアンジェラに近づいてくると、息絶えた小さな獣を見てからアンジェラを見た。

「いえ、なんでもありませんわ。メロディは?」
「館に置いてきました」

 走って往復したにしては早い。あまりの短時間にアンジェラはコンラッドが昔よりも力があることを知り、少しだけ嫉妬した。

(ずるいわ。同じ年なのに)

 だから心臓が騒がしいのは嫉妬のせいだ。

「お怪我は?」
「ありません。大丈夫です」
「閣下、怪我はないけど先生の服が切られました」
「エドガー!」

 コンラッドに気づかれないよう体の向きに気を付けていたのに、エドガーにしれっとばらされてしまった。

「だってそのまま手をはなしたら、胸から腹まで全部見えますよ」
「さすがにそこまでは見えないわよ!」

 真っ赤になったアンジェラに、コンラッドがシャツを脱いで「とりあえずこれを着ててください」と押し付ける。

「それじゃあ旦那様が」

 上半身裸になってしまう!
 彼の逞しい上半身を直視できなくてアンジェラが目を泳がせると、
「私は男ですので別に構わないでしょう」
 と、コンラッドから固い声で言われシュンとした。

(これは、かなり怒ってる)

 コンラッドが感情を抑えていることがわかる分、余計にその怒りが感じられた。
 これは、幻視の魔法を使えばいいと言っても駄目だと言われるのは火を見るよりも明らかだ。どうせ誰かに見られるわけでもないなどと言おうものなら、火に油を注ぐ様な予感がする。コンラッドがめったに怒る人ではないことを知っているだけに、余計にアンジェラはうなだれた。

 ただし彼が怒っているのはアンジェラにではなく、自分自身にだということは理解している。彼は最善のことをしただけ。なのにアンジェラのミスのせいで、彼のほうが自分を責めて怒っている。
 彼はそういう男なのだと無意識に考え、雷が落ちたようなショックを受けた。


 それでもここで謝るのも変なので、アンジェラは大人しく二人が魔獣を処理するのを黙って待つことにした。

「テネイラは肉は食用には向かないので、毛皮だけとって、あとは灰にしましょう」

 死骸を置いておくのは危険なので、少し時間はかかるけれど仕方がない。