星降る夜に、あの日のキスをもう一度


 色々考えた末ヴィクトリアには、「ここは前々世に私が生きていた世界だった」ことと、「三つの前世の記憶が薄くなった」ことだけ打ち明けた。

「年かしらね?」

 本当にここですべてが終わるのかもしれない。
 イレギュラーが多かったアンジェラの人生で、この奇妙な生のすべてに終止符が打たれるのかもしれない。

【まさかとは思うけど、あなた、エドガーについて行くつもり?】

(あら。どうしてバレたのかしら?)

 ヴィクトリアの鋭い指摘にアンジェラは肩をすくめる。

「私は役に立つと思うわよ。ヴィクトリアもその方が安心じゃない?」

 あの子がしなければならないことは、ゲームではないのだから。
 エドガーの力の解放の時に新たに護りの印を刻んだから、肉体的にはあまり心配がいらないとはいえ、心の試練もあるだろう。
 彼はまだ十六歳の少年なのだ。ことが終わるまで側にいてやりたいと思った。
 絶対無事で、かつてリンを見送った時のように、エドガーが自分の世界に帰るのを見送ってやりたかった。

 しばらくメッセージを待つと、タブレット越しにヴィクトリアが怒りに震えていることが伝わってきた。彼女の魔力の波長だろう。テレビ電話だったら思わず彼女の前で正座をしてうなだれてしまいそうな迫力を受け、アンジェラはビクッと肩が震える。

【あの子の力を見くびらないで! 役に立つと思うなら、それだけのものをあの子に与えてから、さっさと帰ってきなさい! 帰ってこなきゃ許さないわよ!】

(うわぁ、めちゃくちゃ怒ってる)

 壮絶に美しい笑顔で青筋を立てているであろう親友の顔を思い浮かべ、それでもアンジェラの顔には笑みが浮かぶ。

「わかった。善処する。戻るときは手伝ってね」

 そう約束したけれど、実際の所エドガーしか召喚できない魔術師では、館ごと向こうに戻すのは困難だろう。ヴィクトリアに手伝ってもらったうえでアンジェラの力をフルで使い、押し上げる感じならいけそうだと考えているのだから。

【大丈夫よ、任せなさい。明日からウィング家に泊まりこむ算段はつけてあるから】

(さすがヴィクトリア)

 準備のよさに噴き出し、アンジェラは通信を終了した。

「さて、午後はメロディを街に連れていく約束だから、準備をしないとね」