星降る夜に、あの日のキスをもう一度


 秘密――たしかに誰にも言えないことはたくさんある。親友にでさえ、強烈な出来事程打ち明けることが出来なかった。はじめての、そして唯一無二の親友なのに。

【コンラッドは親切にしてくれる?】

 どう返事を書こうかと思いあぐねていると、続けてヴィクトリアからメッセージが入ったので、アンジェラは柔らかく微笑んだ。

「ええ、とても親切よ」

(コンラッドがわたくしのことを覚えていてとても驚いたの)
(彼が学生の頃からわたくしを好きだったなんて信じられる?)
(しかもヒィズルで、あなたにも話せなかったキスの相手が彼だったのよ)

 頭の中に女子学生のように華やいだ言葉が溢れてきて、なのにアンジェラの頬には涙が伝った。

 いま、コンラッドを勝手に意識しているのはアンジェラのほうだ。
 昨日もおとといも、彼は結婚を匂わせるようなことは言っていない。
 ただただ、アンジェラが大事な家族であるかのようにさりげなく気遣ってくれるし、まるで崇拝しているかのような態度で接してくる。
 昨夜もさり気なくアンジェラの首の後ろを揉み、「まだ疲れが取れてませんね」と、ゆっくり休むように言ってくれた。温かい大きな手とマッサージの心地よさに、思わずうっとりしてしまう。

(だって、男の方からこんな風に扱われたのは初めてなんだもの)

 あまりにも居心地がよくて幸せで、ずっとこのままでいられたらと夢見てしまう気持ちに何度も蓋をした。この幸せは、アンジェラにとって恐怖と表裏一体だ。

(いっそ正式に求婚してくれたら、きっぱり断ることもできるのに)

 本心では、家族のために、そしてアンジェラやエドガーのために時間を割きながら、仕事で根を詰めていたコンラッドを労わりたかった。時々苦しそうな目をする彼を慰めたかった。でもアンジェラは、自分の中で大きなブレーキがかかっている。