星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 そして今――。

 一気に視界が狭まったアンジェラは倒れないよう咄嗟に手を出したものの、その手は床ではなく誰かの手に支えられた。
 瞬間的に隣にいるエドガーだと思ったものの、ほぼ見えない目に映ったのはコンラッドのほうだった。

「どこか痛めたのですか」

 落ち着いているがどこか焦ったような声と共に、ふわりと抱き上げられるのを感じる。慌てておろしてもらおうと思ったけれど、身体がしびれてうまく動けず、かすかにうめき声が漏れた。

「怪我はしていないはずです。立て続けに力を使いすぎたことで、貧血を起こしたんだと思います」

 エドガーが落ち着いた声で説明し、これであっているかという風に「先生?」と言うので、アンジェラは消えそうになる意識をかき集めてどうにか頷く。
 ここがどこだか分からなかったとはいえ、幻視に武器召喚、そして一本だけとはいえ矢に魔力を込めたことがこんなにも負担になるだなんて。

(年なのね、きっと)

 三日後には四十歳だ。鍛えていても色々体がついてこなくなっているのかもしれないと思い、見た目を戻したにもかかわらずどっと老けた気分になった。

 逞しい男性に横抱きにされていることも、遠のく意識の奥で(介護させてごめんなさいね)と、自嘲的なセリフを吐いてしまう。これが二十歳やそこらなら夢見心地だったかもしれないけれど。
 残念ながらそんな素敵な青春はアンジェラとしても、その前(・・・)も送ったためしはない――――はず。

(あれ? そうだったっけ?)

 奇妙な既視感に襲われるが、ソファにゆっくりと下ろされるのを感じた瞬間、それは手のひらに乗った雪のようにあっけなく溶けて消えた。

「ライラ、先生に水を」
「はい、旦那様」

 手を揉みしだきながらオロオロと様子を見ていたメイドは、自分のすべきことにホッとしたようにキッチンへと走った。しかし間もなく「水が出ません」と報告する。ライフラインが切れているのだ。本来であれば庭にある井戸も今はない。