◆
エドガーの憶測が真実だと分かったのは、翌日のグレンとの会話でだ。
【母は多分、近いうちにどこかに消えようとしています。今まで俺たちのために踏ん張ってきたけれど、明日、俺が当主を受け継ぐことになっているので、その後のことを妹と危惧していました】
タブレットに現れたグレンの言葉に愕然とする。
【こんなことを言うのは間違っていると思うし、図々しいのは承知です。でも貴方が暁の狼ならば、今も母を愛してはいませんか? もしそうではなくても、できれば昔のよしみで母を守ってくれませんか? 母を一人でいかせないでください】
コンラッドがスミレを愛していたことは、子どもたちには火を見るよりも明らかだったらしい。スミレには通じてなかったのに、子どもたちは分かってた上で自分に懐いてくれていたのか。
次にナタリーの少し震える字が送られてくる。
【母の前世の話は、いつも十代までしかありませんでした。どうしてか聞いたとき、いつも早くに亡くなっていたと教えてくれたんです。母が今世で長く生きているのは、するべきことがあったからだと話してました。でも私の勘では少し違うのではと思ってるんです】
ゆっくり綴られるナタリーのメッセージには、アンジェラには愛する家族が必要なのだと書いてあった。
アンジェラは、どの人生でも血縁に縁がないという。
親を早くに亡くしたり、自分が早く亡くなったり。
【それでも母は愛情深い人で、あふれるほどの愛を注いでくれる人です。もし私が母の立場なら、とても同じことはできないと思います】
「私もそう思うよ、ナタリー」
次にグレンが書き手に変わった。
【俺と妹を育て、当主としての役割も終わった母には愛を注げる対象が必要です。妹はそれが母の命綱だと考えています。そしてそれに、メロディ嬢がちょうどいいのではないかと考えたらしい。お嬢さんはうちの母に心酔しているそうです。――おそらく昔、俺があなたに憧れていたのに近いのではないでしょうか】
(キリが私に憧れてくれていた?)
【リンドウさんがよく、狼とスミレが夫婦になりゃあいいって言ってましたし、俺もそう思ってたんですよ。母は笑い飛ばしてましたけどね】
(やっぱり相手にされてなかったのか)
少しだけ落ち込むが、当時の彼女はコンラッドよりもずっと年上の別人として振舞っていたからだと思い直す。実際には、全く相手にされなかったわけではない。
「スミレにはキラキラ光る思い出の相手がいるらしいけれど、何か聞いたことは?」
そう聞こうとして考え直す。
知ったら知ったで無駄に落ち込みそうだし、また嫉妬で馬鹿なことをしたくはない。代わりにナタリーに、雇い主であるコンラッドが「暁の狼と呼ばれていたことに気づいていたか」と、尋ねてみた。



