星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 話が長くなるから他に人がいない時がいいというグレンに、コンラッドは翌日の午前に話そうと返事をする。
 一瞬、自分がアンジェラに懸想し求婚しようとしていることについてかと思ったが、グレンが知るわけがない。

 コンラッドからも、グレンには聞きたいことが色々あった。
 懐かしい話もしたいが、今は同じくアンジェラのことだ。

 彼女は自身がドランベルの現当主だと言っていた。だから結婚しなかったし、するつもりもないと。
 しかしコンラッドの記憶が確かなら、グレンはコンラッドと十歳しか離れていない。つまり今年三十歳になるはずだ。ならば当主交代も叶うはず。もし万が一、前当主の遺言で縛られているとしても、何かしら方法はあるだろう。

 アンジェラがただのアンジェラに戻れば彼女の懸念はなくなるはずだし、グレン達もそれを望んでくれるに違いない。
 メロディの話では、ナタリーはコンラッドとアンジェラを結婚させたいと思ってくれているらしい。旧知の仲だったことを知った今、彼女がどう思っているのかは分からなかったけれど、それでもアンジェラの結婚を阻むものがコンラッド側にはないとナタリーが考えていたことは分かる。

「まだ味方でいてくれるといいんだが」

 もしアンジェラを妻にできれば、かつてコンラッドが望んだようにグレンやナタリーが自分の子になる。

(しかも孫までついてくるんだな)

 想像しただけでその賑やかさに頬が緩んだ。

 一人っ子だったメロディも、沢山の家族や愛情に囲まれることになるだろう。
 もし、――もしもアンジェラとの間に子どもが生まれたら、
「間違いなく私もメロディも溺愛するだろうな」
 私が世話をすると主張するメロディの顔が浮かぶ。

 ナタリーのおかげで、娘は本当に表情豊かに愛らしくなった。
 それはアンジェラが、ナタリー達に溺れるほどの深い愛情を注いでいたからだろう。


 微かな振動と青臭い匂いに外を覗いてみると、鬱蒼とした森の一部が開けていてコンラッドは唖然とした。もともと泉まで大した距離はなかったが、今は二階の窓から泉までが見渡せるのだ。

 エドガーが自分の力がどれほどなのか、どれだけ制御できるもなのかを試しているのだろう。それが分かっていても、あっというまに倒れていく木々や、簡単に整備されていく大地に唖然とするなというほうが無理だ。

「これは、確かに派手だな」

 驚きを通り越したコンラッドが、妙に冷静になって見物していると、あっという間に露天風呂が出来上がる。
 その周りに倒した木で囲いを作る気遣いに、コンラッドは思わず吹き出した。あれはメロディの希望かもしれない。


 夕食は遅めにし、七時近くまでアンジェラをそっとしておいた。
 食事の前に、目を覚ましたアンジェラとメロディ、ライラが先に風呂に入り、男たちは後に入る。誰もが露天風呂に夢中になる、素晴らしい出来だった。