素の姿では、二十八歳のナタリーの母親には見えないだろうからこれで正解のはず。なのに、どうしてメロディは警戒しているのだろうか?
挨拶を返していると後ろでドアが開き、コンラッドが入ってきたので驚いた。
「おや。いいタイミングだったようだ。臨時でお世話になる新しい先生ですね。私はメロディの父、コンラッド・ウィングです。昨日留守にしてしまったので、図々しくもご挨拶に伺いました」
「まあ旦那様。図々しいだなんてとんでもない。わざわざご足労願わなくても、後程こちらから伺う予定でしたのに」
「いえ。ナタリー先生には娘が大変お世話になってますから、先生のお母様にもお会いしてみたかったのですよ」
柔らかく微笑む姿は、昔のコンラッドからは想像もつかない。
(娘の先生に愛想笑いもできるようになるなんて。絶対零度の王子様も、今では普通のお父様なのね)
そんなことを考えつつ、ナタリーの言っていたことにも納得できる。
一言で言うと、彼は「完成された男」という印象だ。
学生時代にはまだ線の細さを感じさせ、それも女子の人気に拍車をかけたものだ。しかし今も鍛えていることを感じさせる幅の広い肩も、自信に満ちた落ち着いた低い声も加わり、これは女性が自分の意志とは関係なく、うっとりと彼を愛でてしまっても不思議ではないと感心した。
美しい顔立ちだが、間違っても女性的なところはかけらもない。内に荒々しさも秘めているであろう、そんな隠しても隠し切れない魅力が駄々洩れで、アンジェラは心の中で盛大な拍手を送った。
(あらやだ、意外。これは、渋みを増した十年、いえ二十年後くらいが楽しみじゃない?)
しかしそんな考えはおくびにも出さず、穏やかに微笑んで挨拶を交わす。
仕事で多忙であろうコンラッドが娘のために時間を割いたことは、ひそかにアンジェラの中で少しだけ彼の株を上げる出来事だった。彼が世界をまたにかける実業家であり、仕事人間であることを聞いていたからだ。
「始める前に、サロンでお茶でもいかがですか」
そんな彼から社交辞令であろう誘いを断ろうとした時だ。
稲妻が光り、部屋に白い光が走った。
同時に轟音が鳴り響き館が震える。
それが立て続けに三度起こった後、妙に明るくなった外を見ると、そこには見知らぬ風景が広がっていたのだった。
挨拶を返していると後ろでドアが開き、コンラッドが入ってきたので驚いた。
「おや。いいタイミングだったようだ。臨時でお世話になる新しい先生ですね。私はメロディの父、コンラッド・ウィングです。昨日留守にしてしまったので、図々しくもご挨拶に伺いました」
「まあ旦那様。図々しいだなんてとんでもない。わざわざご足労願わなくても、後程こちらから伺う予定でしたのに」
「いえ。ナタリー先生には娘が大変お世話になってますから、先生のお母様にもお会いしてみたかったのですよ」
柔らかく微笑む姿は、昔のコンラッドからは想像もつかない。
(娘の先生に愛想笑いもできるようになるなんて。絶対零度の王子様も、今では普通のお父様なのね)
そんなことを考えつつ、ナタリーの言っていたことにも納得できる。
一言で言うと、彼は「完成された男」という印象だ。
学生時代にはまだ線の細さを感じさせ、それも女子の人気に拍車をかけたものだ。しかし今も鍛えていることを感じさせる幅の広い肩も、自信に満ちた落ち着いた低い声も加わり、これは女性が自分の意志とは関係なく、うっとりと彼を愛でてしまっても不思議ではないと感心した。
美しい顔立ちだが、間違っても女性的なところはかけらもない。内に荒々しさも秘めているであろう、そんな隠しても隠し切れない魅力が駄々洩れで、アンジェラは心の中で盛大な拍手を送った。
(あらやだ、意外。これは、渋みを増した十年、いえ二十年後くらいが楽しみじゃない?)
しかしそんな考えはおくびにも出さず、穏やかに微笑んで挨拶を交わす。
仕事で多忙であろうコンラッドが娘のために時間を割いたことは、ひそかにアンジェラの中で少しだけ彼の株を上げる出来事だった。彼が世界をまたにかける実業家であり、仕事人間であることを聞いていたからだ。
「始める前に、サロンでお茶でもいかがですか」
そんな彼から社交辞令であろう誘いを断ろうとした時だ。
稲妻が光り、部屋に白い光が走った。
同時に轟音が鳴り響き館が震える。
それが立て続けに三度起こった後、妙に明るくなった外を見ると、そこには見知らぬ風景が広がっていたのだった。



