星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 間もなく二番目のチップが青く光ったのでタップすると、今度は先ほどのメッセージが消えて、力強く優美なヴィクトリアのサインが現れた。
 それにアンジェラとエドガーがサインを返す。
 同じことを複数回繰り返し、問題なく使えることが分かった。

「とりあえずあちらには、わたくしの自宅、ヴィクトリア、それから旦那様の所用に三枚用意できたようですわ」
「これは、いったい」

 驚きに目を見張るコンラッドに、アンジェラは内心どう答えようかと首を傾げる。
 イリスの連絡手段は基本手紙だ。信号を使ってやり取りをする無線のようなものもある。王侯貴族の一部ならテレビ電話のような魔法を使える人もいるけれど、一般的ではない。
 普通の市民だと、上流階級であっても電話に近いものもないし、電子メールもないのだ。

 アンジェラの感覚では、これはメッセージアプリ(ただし手書き)。そう言って通じるだろうか、いや無理だろう。

「ええと、矢文を使わず、魔力を飛ばす手紙です」

 他に説明しようがない。

「幸いこの世界は、イリスと何らかの道でつながっています。その見えない道を召喚のように物質を飛ばさず、かわりに小さな魔力を飛ばしているんです」

 アンジェラはタブレットの文字の部分を指さした。

「これはタブレットという道具ですが、ええと、数字にしたほうが分かりやすいかしら。この文字や絵を描いた青白い部分を例えば一。何も書いてない黒い部分をゼロとして、一の部分だけを信号として送ってます。同じ場所に信号を受けた部分が表示される仕組みです。その為向こうにも、同じ比率でタブレットを作ってもらいました」

 そうすれば多少大きさが違っても、拡大縮小されるだけで同じように表示される。

「まだ試作なので小さな文字にすると潰れますけれど、おおむねこれで連絡が取れますわ。このチップの四枚が相手と連動してます。上からドランベル、ヴィクトリア、ウィング家。最後の一つは予備です」
「これは――通信技術の革命ですね」

 唖然としているのと同時に興奮しているような実業家らしいコンラッドの言葉に、アンジェラは小さく噴き出した。たしかに。