星降る夜に、あの日のキスをもう一度


 頬の手を外しながら、
「ここにいるのもあと数日の辛抱ですから」
 というアンジェラに、コンラッドは怪訝そうな顔をした。

「ヴィクトリアから、エドガーを召喚したこの世界の魔導士に連絡をしてもらっています。彼らがエドガーを迎えに来たら、きっとこの館もイリスに送り返してもらえますわ」
「そう、ですか」

 今一浮かない顔のコンラッドを安心させるように頷き、アンジェラはドアの前に立つシドニーのほうを振り返った。

「シドニー、今朝お願いしたものは見つかりましたか?」
「はい。お望み通りかは分かりませんが、今ライラが取りに行っております。あ、持ってきたようですね」

 シドニーがライラを通すのに大きくドアを開く。

「アンジェラ様、見つかったのはこんな感じのものですけど」

 そう言ってライラが見せてくれたのは、透明なガラス板のようなものだ。
 実際にはガラスではなくスタウルというもので、どちらかと言えば軽くて丈夫なアクリル板に近い。図書室で古い本を保管するのに使うケースの、予備の部品だそうだ。

「旦那様、矢の召喚の代わりになる方法を考えたのでこれを使いたいんですけど、頂いてもよろしいでしょうか」

 色々加工しなくてはいけない為、もし大事なものなら他のものを考えるというアンジェラに、コンラッドは「もちろん構いません」と言ったが、何をするのかと懐疑的な表情になっている。

「もちろん試してみたわけではないので、うまくいくかどうかは分からないんですけど。ライラ、お願いした灰はできましたか?」
「ここまではなんとか」

 今朝ライラとシドニーに、飛竜の皮の一部を灰にしてほしいと頼んでいたアンジェラは、ライラが持ってきた古い金属製の箱をのぞき込む。

「うーん。手ごわいですね」

 中にあった皮は炭化しているが、指で触れるとまだ硬い。灰になっている部分もあるけれど、欲しい分量には全然足りなかった。イリスにいれば簡単に手に入るイロン粉の代わりにと思ったのだけど……。

「エドガー。悪いんだけどこれをサラサラの粉にしてくれないかしら。イロン粉の代わりにしたいの」