星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 アンジェラはコンラッドが手紙を前に考え込んでいるのを見ながら、彼が顔を上げるまで思う存分メロディの頭を撫でまわした。おかげで気力だけはだいぶ回復した気分だ。

「この手紙が本物であることも、どのように受け取ったかもわかりました」

 そう言ったコンラッドの目が少し怖い。

「アンジェラ。だからそんなに顔色が悪いのですね」

(え? バレてたの?)

「いやですわ、旦那さま。気のせいです」

「いいえ、気のせいではない。さっきだってスープを飲むのがやっとだったじゃないか。いや、否定しなくて結構。続けざまに貴女が魔力を使っているのをこの目で見てるんですよ。現にさっきだってフラフラだったのに、更に負担をかけるなんて何を考えてるんですか」

 そう言って立ち上がると、メロディに場所を交換するようにと命じる。
 メロディがにっこり笑ってエドガーの横に立つと、どかっとコンラッドが隣に座り、アンジェラの頬を両手で挟んで目をのぞき込んできた。ここの主人である彼に相談しなかった負い目もあって言い訳することもできず、なんだか見世物になったような気分だ。

 コンラッドは怒鳴りつけたいのを我慢しているかのように、かすかに震えながら何度も口を開いては閉じた後、肩で大きく息を吐いて呻くように
「その召喚は、私にもできますか?」
 と尋ねた。

「いえ、たぶん無理です」
 嘘ではない。

 引き出すことの発想はアニメだったけれど、理論的にはネットのクラウドだ。
 フォルダを作ってアイテムを保管し、IDとパスワードを使って他の場所からもアクセスできるようにしてあるのと同じ。
 つまりそれには紐づけが必要で、アンジェラも現時点で送受信ができるのは自分の弓矢や剣だけだ。その中でも一番軽い矢に文を結ぶ形で送ったり受け取ったりが出来ている。

(この発想も、前世で子どもの頃にテレビで見た矢文を思い出したからだしね)

 コンラッドの魔力と水呼びができるほどの技術力なら、あらかじめイリスで何かに紐づけをしていれば可能だったかもしれない。しかし普通、召喚のように無駄に魔力を消耗する術は気軽にするものではないのだ。事実コンラッドは使ったことがないと肩を落とした。

 あちらに連絡ができるなら色々したいことが多いに違いない。
 けれどアンジェラの負担を考えるとできない。
 たぶんそう思ってるのだろう。
 こんなことに巻き込まれてしまった彼は、アンジェラの負担など気にしなくていいのに。