星降る夜に、あの日のキスをもう一度

「いやだわ。エドガーまで笑わなくてもいいじゃない」
「いやぁ、さすが俺の師匠だと思って」

 アンジェラの魔法の使い方が独特で奇天烈に見えるのは発想の違いでしかない。
 それはアンジェラの場合単純に、見てきたものや知識の違いだ。特に前世の日本では、初めて当たり前に「学ぶ」ということをした。
 一般人がごく普通に文字の読み書きを習える世界なんて、それまで見たこともない。世界には情報が溢れ、病弱で学校に通うことや外に出られることが稀だったにもかかわらず、本やテレビ、タブレットを使ってあらゆることを見聞きすることができた。自分が覚えている記憶の中で、単純に好奇心を満たしたり、生きるためではない知識を一番詰め込んだのが前世だ。
 そんな日本人だった頃の影響で今世では、前々世、前前前世の経験も生かせるようになったと思っている。

 面白そうに肩を揺らすエドガーを睨むふりをして、アンジェラは肩をすくめた。

「魔力と剣が化け物級なんて呼ばれているエドガーと一緒にしないでくれるかしら?」
「いえいえ。淑やかなふりして化け物なのは先生のほうですよ」

 アンジェラに向かってズバリ化け物だと言ったエドガーに、コンラッドがはっと息を呑む。コンラッドに睨まれたエドガーが小さく肩をすくめるが、一方でメロディが「アン先生は化け物じゃないわよ」と口を尖らせた。そのままアンジェラの手を引いて耳に口を寄せると、
「独特なのは、色々な世界で様々なことをご覧になったからでしょう?」
 と囁くので、アンジェラは肯定の意味でにっこり微笑む。頭のいい子だと思った。

 何か期待している風のメロディに少しだけ首を傾げると、
「私にもご褒美をくださいませんか?」
 と小さな声で言っておでこを指さす。私も頑張ってますよと小さく主張する姿がなんとも可愛らしい。

 「ええ、もちろん」と、先程エドガーにしたようにメロディの額にキスをすると、彼女はへらっと笑って頬を染めた。そのミルクを飲んで満足した子猫のような表情に、アンジェラは思わず胸がときめいてしまう。
 昨日の毛を逆立てた子猫のような姿もかわいらしかったけれど、やはり可愛い女の子の笑顔は格別だ。

(はあ、癒やされる)