アンジェラは自分用にあてがわれている部屋に入ると、ドアの前でズルズルとへたりこんで両手で顔を覆った。
「ううっ、地中深くに埋まりたい」
大丈夫だと訴えたにもかかわらず、コンラッドにお姫様抱っこされたまま館に帰ることになってしまった。
メロディの強い説得と期待に満ちた目に負けたのだ。
「パパかっこいいわ、素敵! アン先生お姫様みたい」
あの目を見てしまうと、まんざらでもないコンラッドの手から降ろしてくれとはとても言えなかった。アンジェラ自身は汗だくで、とてもじゃないがお姫様とは程遠い状態だったのに。
どうにか力を振り絞って、汗でぬらしてしまった彼のシャツと自分に清浄の魔法をかけたのは、ごく当たり前の気遣いであって乙女心ではない。絶対ちがう。
「はあ。ちょうど正午だし、矢を召喚しなきゃね」
思ったよりも色々と時間がかかってしまい、気付けば約束の時間だ。
気力を振り絞って矢を召喚すると、思った通りボリュームアップした矢文を手にして、どっと力が抜けた。
息子への労いの気持ち半分、疲労で泥のように眠りたいのが半分。
ここが異世界のため、時空を超えた物質の召喚は普段の何倍も負担がかかる。質量が増えればそれだけ力も余分にかかるわけで。
魔法石があるだけましとはいえ、それは力の回復が早いだけで疲れるのは同じなのだ。
神社のおみくじよろしく複数結ばれた文の中から、息子が使っている薄い青色の紙を開く。これはドランベルの印が透かしで入っているものだ。
ざっと目を通していくと、ヴィクトリアからのメッセージが最後に追加されていた。どうやらグレンが使いを送った後、そのままドランベル家に来てくれたらしい。車を使えば一時間程度の距離だけれど、自宅に待機していることが出来なかったのだろう。
アンジェラは大きく深呼吸してからほつれた髪を急いで結い直し、頬を何度かぺちぺち叩いたり唇をかんで血色よく見せると、手紙を束ねてポケットに入れて階下に降りた。
とりあえず人の気配があるダイニングに向かうと、すでに昼食の準備が始まっている。スープとパンだけの簡単な食事を済ませた後、コンラッドとメロディ、エドガーを伴ってリビングに移動した。
ソファーセットの奥にコンラッドが腰かけ、その正面にアンジェラ。隣にメロディ。エドガーはコンラッドの後ろにある窓にもたれかかるように立つ。
シドニーがお茶を入れてくれるのを待ってから、アンジェラは手紙の束を取り出した。
「旦那様。うちの息子によれば、昨日ウィング家の別館が消えたことは、まだ世間には知られていないようですわ」
何でもないことのようにグレンからの手紙を持ってそう言ったアンジェラに、コンラッドは訝しげな顔をした。
「それはいったい?」
不思議そうにしながらも、アンジェラが目の前に並べたウィング家家令からの手紙と、コンラッドの会社の副社長ハリーからの手紙を渡すと、真剣な目になって目を通し始める。
「エドガー。ヴィクトリアは今ドランベル家に来ているらしいわ」
「そうなんですね。お手数をおかけしてすみません」
「いいえ、全然。上手くいってよかったわ」
「ううっ、地中深くに埋まりたい」
大丈夫だと訴えたにもかかわらず、コンラッドにお姫様抱っこされたまま館に帰ることになってしまった。
メロディの強い説得と期待に満ちた目に負けたのだ。
「パパかっこいいわ、素敵! アン先生お姫様みたい」
あの目を見てしまうと、まんざらでもないコンラッドの手から降ろしてくれとはとても言えなかった。アンジェラ自身は汗だくで、とてもじゃないがお姫様とは程遠い状態だったのに。
どうにか力を振り絞って、汗でぬらしてしまった彼のシャツと自分に清浄の魔法をかけたのは、ごく当たり前の気遣いであって乙女心ではない。絶対ちがう。
「はあ。ちょうど正午だし、矢を召喚しなきゃね」
思ったよりも色々と時間がかかってしまい、気付けば約束の時間だ。
気力を振り絞って矢を召喚すると、思った通りボリュームアップした矢文を手にして、どっと力が抜けた。
息子への労いの気持ち半分、疲労で泥のように眠りたいのが半分。
ここが異世界のため、時空を超えた物質の召喚は普段の何倍も負担がかかる。質量が増えればそれだけ力も余分にかかるわけで。
魔法石があるだけましとはいえ、それは力の回復が早いだけで疲れるのは同じなのだ。
神社のおみくじよろしく複数結ばれた文の中から、息子が使っている薄い青色の紙を開く。これはドランベルの印が透かしで入っているものだ。
ざっと目を通していくと、ヴィクトリアからのメッセージが最後に追加されていた。どうやらグレンが使いを送った後、そのままドランベル家に来てくれたらしい。車を使えば一時間程度の距離だけれど、自宅に待機していることが出来なかったのだろう。
アンジェラは大きく深呼吸してからほつれた髪を急いで結い直し、頬を何度かぺちぺち叩いたり唇をかんで血色よく見せると、手紙を束ねてポケットに入れて階下に降りた。
とりあえず人の気配があるダイニングに向かうと、すでに昼食の準備が始まっている。スープとパンだけの簡単な食事を済ませた後、コンラッドとメロディ、エドガーを伴ってリビングに移動した。
ソファーセットの奥にコンラッドが腰かけ、その正面にアンジェラ。隣にメロディ。エドガーはコンラッドの後ろにある窓にもたれかかるように立つ。
シドニーがお茶を入れてくれるのを待ってから、アンジェラは手紙の束を取り出した。
「旦那様。うちの息子によれば、昨日ウィング家の別館が消えたことは、まだ世間には知られていないようですわ」
何でもないことのようにグレンからの手紙を持ってそう言ったアンジェラに、コンラッドは訝しげな顔をした。
「それはいったい?」
不思議そうにしながらも、アンジェラが目の前に並べたウィング家家令からの手紙と、コンラッドの会社の副社長ハリーからの手紙を渡すと、真剣な目になって目を通し始める。
「エドガー。ヴィクトリアは今ドランベル家に来ているらしいわ」
「そうなんですね。お手数をおかけしてすみません」
「いいえ、全然。上手くいってよかったわ」



