星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 にっこり笑ってエドガーのシャツのボタンを上からいくつか外し、アンジェラは両足にしっかり力を入れると彼の胸に右手をあてた。
 周りの音が消え、手のひらに意識が集中する。

解錠(リ・ラプン)。道を開け」

 普段せき止めているエドガーの魔力の門を開き、その源になる力をアンジェラの右手に少しずつ流していく。流れたそれがアンジェラの全身を巡り、痺れるような拒否感にうめき声が漏れそうになるのを必死に耐えた。エドガーのほうも、微かに頬をゆがませているが、懸命に呼吸を整えているようだ。

「先生、無理してませんか?」

「大丈夫。あまりわたくしを年寄り扱いしないでね」

 わざと冗談めかして答えれば、エドガーは気遣う様子を見せながらも、なんでもないような態度をする。こういう点はヴィクトリアそっくりだ。
 よく考えてみれば、ヴィクトリアも彼女のおじい様もリンの子孫だったのだと考えると感慨深いものがある。

(リン。貴方の子孫の力になれて嬉しいわ)

「エドガー、一旦預かった力を分けて戻します。(いん)を刻んでブロック分けしていくから目を閉じて。心の目でしっかり見なさい」
「はい」

 本来ゆっくり開くはずだった扉の代わりに、エドガーの内側に引き出しのようなものを作っていく。一気に開かないよう、エドガーの詠唱によって順番に開くよう鍵になる印を刻み直した。
 今度は左手をエドガーの胸に当てて彼の力を戻していくと、周囲に組んだ陣の付近の草花や石が揺れ、ざわざわと風が渦巻き始める。

施錠(シ・ラプン)。――エドガー、終わったわ。お疲れ様」

 エドガーの足が一瞬フラッとして転びそうになり、慌てて抱き留めようとするものの逆に引っ張られる。それでも尻もちをついたエドガーに抱きしめられる形でアンジェラが転ぶのは免れた。

「ハハッ。先生、やっぱりすごいわ」

 荒い息になっているエドガーの額にアンジェラは「頑張ったわね」と、ご褒美のキスをして立ち上がると、腰に手を当て深く息を吐く。
 アンジェラの髪から汗がしたたり落ちた。

「アン先生、終わったの?」

 心配そうな目のメロディに問われ、
「ええ。終わったわ」

 そう言った後、アンジェラもフラッと足元がもつれる。あっと思ったときにはコンラッドの腕の中で、(介護再びだわ)と、弱々しく笑った。

「すみません、旦那様」