星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 そしてその日――。

 宣言通り老女の姿でウィング家を訪れたアンジェラは、前日にあいさつした際教えられた通り門を入ると右に折れ、本館よりもこじんまりとした館のドアを叩いた。
 なんとここはメロディ専用の館なのだという。

 メロディの基本的な生活空間はもちろんのこと、図書室を備えた学習室や、ちょっとした運動が可能なホール、今はほぼ使われていないが、使用人の寝室まであるという。本館の隣にあるだけで、規模としてはちょっとした別荘のようだ。

(一見豪華で甘やかされたように見えるけど、寂しそうに見えるのは気のせいかしら?)

 ドアを開けて対応してくれるのは昨日と同じ執事だ。
 実は彼のことも覚えている。
 コンラッドの通っていた学園では生徒には執事かメイドが同伴するのが決まりで、彼はコンラッド付きの執事だったからだ。
 もちろん、知ってるようなそぶりは見せないけれど。

 ホールに足を踏み入れると、てっきり部屋で待っていると思われたメロディが一緒にいたのは意外だった。

「あなたが、ナタリー先生のお母様?」

 品定めするような鋭い眼差し。声は大きくはないけれどきつい口調。
 自分を大きく見せようとでも言うようにあごを上げ、見下すように目線を下げる。
 それはそれは見事な意地悪令嬢の出来上がりで、アンジェラは(あら、可愛い)と内心ニヤリとした。

 メロディは母親似なのだろう。
 黒髪である父親とは似ていない赤味がかった金髪に灰色の目の少女は、生意気な表情でも人形のように可愛らしかった。居丈高にふるまっていても、子猫がシャーシャー毛を逆立ててるようにしか見えない。
 爪をたてられたら痛いだろうと思いつつも、追いかけて抱きしめて撫で繰り回したくなる衝動に身もだえした。
 家庭教師として付き合うのは期間限定でも仲良くできたらいい。うちに遊びに来てくれるくらいになったら最高。懐いてくれるかしら?

(でもおかしいわね。おばあちゃんなら警戒しないと思ったのに)