星降る夜に、あの日のキスをもう一度


 場所は先ほどの泉にした。
 湧き水がわいている清涼な空間は、魔法の力を安定させるだろう。
 コンラッドがさっき草をなぎ倒しながら歩いてくれたので、格段に歩くのが楽になっている。その中でアンジェラは、子どもたちに食べられる野草や食べてはいけない野草の説明をしながら、ゆっくりと進んだ。

「あっ、これは知ってます。ナタリー先生が蜜が甘いって言ってました」

 メロディが指さすラッパ型の花にアンジェラは微笑む。
 それはヒィズルにもあった花で、摘むと必ずナタリーが蜜をなめていたものだ。

「この花は食べることもできるわよ。小麦粉を水で溶いて絡めたものを油で揚げるの」

 この世界に天ぷらはないが、ヒィズルにいるときはよく作った。時々食べ物が手に入らないとき、野草をとってきてはよく天ぷらもどきにしたのだ。日本食万歳。
 油と粉は仲間に貸してもらうかわりに、アンジェラが作った天ぷらをみんなで食べた。コンラッドも思い出したらしく懐かしそうに目を細めているのが目に入り、アンジェラはそっと目をそらす。

「先生、この花は?」
「エドガー、それは毒だから食べちゃダメ。死にはしないけど、お腹は確実に壊します。こっちの草なら血を止めるのに使えるわよ。擦り傷くらいなら揉んで当てておけば大丈夫」
「へえ」

 慎重に見分け方を教えていっても忘れてしまうことのほうが多いかもしれない。でも大事なことが少しでも残ればいい。その少しが命を繋ぐことがあるのだから。


 泉に着くと、予想通りメロディはその美しさに目を輝かせて喜んだ。

「すごいわ。きれい!」

 エドガーのほうは周りの地形を見回して「ふむ」と呟く。

「先生、あの水を少しあっちに貯めて、風呂にしてもよさそうな感じじゃないですか?」
「あら、それは素敵ね」

 たしかに大きな岩の窪みは大きな風呂になりそうだ。岩自体を温めれば、貯めた水を沸かすこともできるだろう。

「ええっ。外にお風呂なんて、あっても入れないですよね?」