星降る夜に、あの日のキスをもう一度



 百年近い記憶を持つ中で、今世のアンジェラの人生では、生れてはじめてのことがたくさんあった。
 辛いことも多かったけれど、それでも怖いくらいに幸せだった。
 夢だった学生生活も、恋に似た思いも味わったし、子供も育てた。
 しかも求婚もだなんて、今世はなんて贅沢な人生だったのだろう。

(今日のことも宝物として大事にしまっておくわ)

 必ずコンラッドたちを元の世界に戻すから。
 今は特殊な状況のせいで、昔の気持ちが蘇っているせい。スミレもアンジェラも、遠い昔の幻想。また離れてしまえば、彼はきっとわたくしのことなどすぐに忘れるはずだし、それでいい。

 それでも嬉しかった。夢みたいだった。
 どうして好きになってもらえたのか分からないけれど、今唐突に実感できた彼の気持ちが本当に嬉しい。
 でもわたくしはもう、世界が一変するのを見たくない。
 彼が背中を向けるのを見たくない。
 ――そのことに気づいてしまったから。

(ごめんなさい、コンラッド。わたくしは未来を夢見ることができない)

 昔、暁の狼とキスをした後、祖父危篤の知らせが入った。
 学生の頃、太陽神の恰好をした男性とキスをした後、姉たちの訃報が入った。
 いつもアンジェラは、誰かとの未来を夢見た瞬間、悪夢を見てきたのだ。


(もし願いが叶うなら、今この瞬間に命尽きればいいのに)

 ――――そしてもう、来世なんて来なければいい。