アンジェラは呆然として、すぐそばにあるコンラッドの顔を見つめた。
そこに何か答えが書いてあるのではないかというほど真剣に見つめたけれど、彼の腕の中にいたのでは頭の中が混乱して考えがうまくまとまらない。
昨日からじわじわと存在感を増してきた目の前の男性が、アンジェラの魂に自分を刻み込むかのように近づいてくる。
そこに突然彼から綺麗だと言われたことで、年甲斐もなくカーッと頬に熱が集中してしまった。
いつもなら、まあお上手、とにっこり笑って終わりになる程度のセリフのはずなのに、今は何も言葉が出てこないのだ。彼の目がまるで、本当にアンジェラを綺麗だと思っているように感じ、どうしていいのか分からなくなった。
少しでも離れようと彼の腕に当てた手を押して視線をそらすと、今度は彼の伸びかけたひげが目に入ってしまう。そのせいで今度は昨夜手のひらに受けた感触が甦って、ずっと昔の、狼のキスを思い出してしまった。
ひげを生やすことが珍しくなかった暁の狼。
その口づけを、今のように抱きしめてきた腕を、かたい胸の感触をありありと思いだし、つま先がキュッと丸まった。
(彼から二度も求婚されかけていた? スミレだけではなく、アンジェラとしても? まさか。そんなまさか)
どう考えても、学生時代に彼から求婚されるだけの理由が思い当たらない。なのに何かが引っかかり、ソワソワとさらに落ち着かなくなった。
「コンラッドは昨日、わたくしと友達になりたかったと仰いましたよね?」
確認するようにおずおずとアンジェラが尋ねると、彼は楽しそうに目をきらめかせて「いや?」と言った。
「仲良くなりたかったと言っただけです。友達になりたいなんて、一度も思ったことはない」
その言葉に突き放されたような気がしてアンジェラが怯むと、コンラッドが「そうじゃない」と首を振った。
「アンジェラ。初めて会った時から私は貴女が特別だったんだ。十六歳の時、あのホテルのロビーでのことを、今でもはっきり覚えてる。あの時私はアンジェラ、貴女に一目惚れしたんです」
「まさか」
アンジェラは思わず笑い飛ばそうとして彼の真剣な目に口をつぐみ、今度は力なく「そんなこと有り得ないわ」と呟いた。
「だってわたくしは、地味で目立たないつまらない女だったでしょう」
学生時代のアンジェラは、美しい幼馴染の横でちょろちょろしているだけの存在だった。漫画で言えば、間違いなくその他大勢のモブだった自覚がある。
スミレならまだ分からなくはないのだ。
スミレは前世で好きだった小説のかっこいいヒロイン、町田純玲をモデルにして振舞った女だし、だからこそ憧れる男性もいるだろうと、無理やり納得もできる。
実際ヒィズルでは、そこそこちょっかいかけてくる男たちがいて、すっかりシバキ倒……、いや、あしらうことがうまくなったくらいだ。さすがにイリスでは、あんな風にふるまうわけにはいかないけれど。
なのにコンラッドは、心底不思議そうな表情で首を傾げた。
「アンジェラは昔から綺麗でしたよ?」
「~~~っ!」
(だから本気みたいに聞こえるんですってば!)
そこに何か答えが書いてあるのではないかというほど真剣に見つめたけれど、彼の腕の中にいたのでは頭の中が混乱して考えがうまくまとまらない。
昨日からじわじわと存在感を増してきた目の前の男性が、アンジェラの魂に自分を刻み込むかのように近づいてくる。
そこに突然彼から綺麗だと言われたことで、年甲斐もなくカーッと頬に熱が集中してしまった。
いつもなら、まあお上手、とにっこり笑って終わりになる程度のセリフのはずなのに、今は何も言葉が出てこないのだ。彼の目がまるで、本当にアンジェラを綺麗だと思っているように感じ、どうしていいのか分からなくなった。
少しでも離れようと彼の腕に当てた手を押して視線をそらすと、今度は彼の伸びかけたひげが目に入ってしまう。そのせいで今度は昨夜手のひらに受けた感触が甦って、ずっと昔の、狼のキスを思い出してしまった。
ひげを生やすことが珍しくなかった暁の狼。
その口づけを、今のように抱きしめてきた腕を、かたい胸の感触をありありと思いだし、つま先がキュッと丸まった。
(彼から二度も求婚されかけていた? スミレだけではなく、アンジェラとしても? まさか。そんなまさか)
どう考えても、学生時代に彼から求婚されるだけの理由が思い当たらない。なのに何かが引っかかり、ソワソワとさらに落ち着かなくなった。
「コンラッドは昨日、わたくしと友達になりたかったと仰いましたよね?」
確認するようにおずおずとアンジェラが尋ねると、彼は楽しそうに目をきらめかせて「いや?」と言った。
「仲良くなりたかったと言っただけです。友達になりたいなんて、一度も思ったことはない」
その言葉に突き放されたような気がしてアンジェラが怯むと、コンラッドが「そうじゃない」と首を振った。
「アンジェラ。初めて会った時から私は貴女が特別だったんだ。十六歳の時、あのホテルのロビーでのことを、今でもはっきり覚えてる。あの時私はアンジェラ、貴女に一目惚れしたんです」
「まさか」
アンジェラは思わず笑い飛ばそうとして彼の真剣な目に口をつぐみ、今度は力なく「そんなこと有り得ないわ」と呟いた。
「だってわたくしは、地味で目立たないつまらない女だったでしょう」
学生時代のアンジェラは、美しい幼馴染の横でちょろちょろしているだけの存在だった。漫画で言えば、間違いなくその他大勢のモブだった自覚がある。
スミレならまだ分からなくはないのだ。
スミレは前世で好きだった小説のかっこいいヒロイン、町田純玲をモデルにして振舞った女だし、だからこそ憧れる男性もいるだろうと、無理やり納得もできる。
実際ヒィズルでは、そこそこちょっかいかけてくる男たちがいて、すっかりシバキ倒……、いや、あしらうことがうまくなったくらいだ。さすがにイリスでは、あんな風にふるまうわけにはいかないけれど。
なのにコンラッドは、心底不思議そうな表情で首を傾げた。
「アンジェラは昔から綺麗でしたよ?」
「~~~っ!」
(だから本気みたいに聞こえるんですってば!)



