なぜか浮気したのを見つかったような落ち着かない気分になるが、アンジェラの表情は穏やかで思いやりに満ちたものだった。
「少しだけ。グレンがビクトの学生だった頃、彼女はリリスで評判の美人でしたから」
学園祭に遊びに行ったときに教えてくれたのだと言われ、「そんなにそばに」と愕然とした。
「アンジェラ……。私は、本当は貴女と家族になりたかったんです」
思わず彼女の手を強く握ってしまい、痛そうな表情に慌てて少し力を緩める。
「ヒィズルで、自分の素性を伝えて、一緒にイリスに来てくれないか。そうお願いしようと思っていたんだ」
「それは、スミレにでしょう」
目をそらし俯くアンジェラの頬に、微かに震える手をあてる。
なぜ彼女がスミレを別人のように言うのか不思議だった。それでも彼女の様子を慎重に観察してみれば、年上として振舞っていたスミレは、確かに普段のアンジェラとは少し違うのかもしれない。
当時は年下の男としてあしらわれていたことを思い出し、ふっと笑いがこぼれた。
(それでも彼女は、私とキスしたんだ)
しかも情熱的で素敵だったと、今も覚えていてくれている。それは希望につながるのではないだろうか。
(でもスミレだけではないことも知っていてもらわなくては)
自分が元々好きなのは、目の前にいるアンジェラだ。
「ねえアンジェラ。私がどうして、貴女が外国に嫁いだと思っていたかわかりますか?」
「え?」
話題が変わったように感じたのだろう。戸惑ったようにコンラッドを見たアンジェラは小さく首を振る。
「私はリリスの卒業式典の日に学園に行き、対応してくれた職員にそう聞いたのですよ」
「どうしてリリスに……」
「もちろん貴女に会いに行ったんです。アンジェラ、私は貴女に求婚しようとしていたんです」
驚いたようにビクッと肩を揺らして逃げようとするアンジェラの手を引き、胸に抱き寄せる。
(逃がすものか)



