夜明け前に起きたアンジェラは、間もなく起きてきたシドニーやライラと共に館内の掃除をしたり朝食の準備をしたりして過ごした。メロディに少しでもストレスがないよう、出来る限り日常に近い状態を保っておきたかったのだ。
「普段だと、生活は本館を使っているのでしょう? 使用人の方たちも混乱しているでしょうね」
「さようでございますね。ですが我が家はこれしきの事で揺るぎは致しませんよ」
平然とした顔で食器やカトラリーの準備をするシドニーに、アンジェラは「そうなの?」と首を傾げた。
別館とはいえ、突然建物と主人親子、執事とその妻のメイドが消えたのだ。しかもコンラッド自身は事業主で仕事もある。普通大パニックではないだろうか。
「まず旦那様の仕事に関しましては、急に遠方へ出ることもございますから、そうそう混乱はないと思われます。館のほうは、まあ、そうですね。家令のコリーは大変頼りになる人でしてね。ちょっとやそっとじゃ動じたり致しません。この程度ではまず状況整理からはじめ、周りには騒ぐなと厳命していることでございましょう」
そして自慢げにニヤリと笑う執事に、アンジェラはクスクス笑った。アンジェラの中で家令のコリーの姿がガチムチマッチョの老人として思い浮かんだと言うと、「よくお分かりで」としれっと答えるシドニーの姿が可笑しい。
彼は昔から、まじめな顔でちょこちょこと笑わせてくれる名人だったことを思い出す。
もう隠しても仕方がないのでそのことを打ち明ければ二人で昔話に花が咲き、色々聞いて知っていたらしいナタリーが楽しそうにニコニコ笑った。
「旦那様は素晴らしい人たちに囲まれて幸せものね」
「過分なお言葉、痛み入ります。あとは素晴らしい奥様をお迎えできれば完璧でしょう」
「そうでしょうね。できることならば、メロディを愛してくれる女性が好ましいと思うけど――。それは外野が指図できることではないものね」
コンラッドがその気になれば、娘がどんなに反対しようとも妻を迎え入れるだろう。この国(転移しているからイリスではと言うべきか)ではまだ、当主の力が強いのだから。
「ふふ。万が一、メロディが旦那様の結婚の障害になると気に病むようなことでもあれば、わたくしがあの子を引き取ってもいいかしらねぇ」
そんなアンジェラのきわどい冗談に二人が面白そうに笑った。
その様子を慎重に観察し、メロディの心配は杞憂であることを確信する。
少なくともコンラッドの一番そばにいる執事の目には、メロディが彼の障害になるようには映っていない。コンラッドは娘としてメロディを大切しているのだ。
(でももし彼が、メロディが自分の娘ではないと知らなかったら――なんて、そんなこと有り得るのかしら)
「普段だと、生活は本館を使っているのでしょう? 使用人の方たちも混乱しているでしょうね」
「さようでございますね。ですが我が家はこれしきの事で揺るぎは致しませんよ」
平然とした顔で食器やカトラリーの準備をするシドニーに、アンジェラは「そうなの?」と首を傾げた。
別館とはいえ、突然建物と主人親子、執事とその妻のメイドが消えたのだ。しかもコンラッド自身は事業主で仕事もある。普通大パニックではないだろうか。
「まず旦那様の仕事に関しましては、急に遠方へ出ることもございますから、そうそう混乱はないと思われます。館のほうは、まあ、そうですね。家令のコリーは大変頼りになる人でしてね。ちょっとやそっとじゃ動じたり致しません。この程度ではまず状況整理からはじめ、周りには騒ぐなと厳命していることでございましょう」
そして自慢げにニヤリと笑う執事に、アンジェラはクスクス笑った。アンジェラの中で家令のコリーの姿がガチムチマッチョの老人として思い浮かんだと言うと、「よくお分かりで」としれっと答えるシドニーの姿が可笑しい。
彼は昔から、まじめな顔でちょこちょこと笑わせてくれる名人だったことを思い出す。
もう隠しても仕方がないのでそのことを打ち明ければ二人で昔話に花が咲き、色々聞いて知っていたらしいナタリーが楽しそうにニコニコ笑った。
「旦那様は素晴らしい人たちに囲まれて幸せものね」
「過分なお言葉、痛み入ります。あとは素晴らしい奥様をお迎えできれば完璧でしょう」
「そうでしょうね。できることならば、メロディを愛してくれる女性が好ましいと思うけど――。それは外野が指図できることではないものね」
コンラッドがその気になれば、娘がどんなに反対しようとも妻を迎え入れるだろう。この国(転移しているからイリスではと言うべきか)ではまだ、当主の力が強いのだから。
「ふふ。万が一、メロディが旦那様の結婚の障害になると気に病むようなことでもあれば、わたくしがあの子を引き取ってもいいかしらねぇ」
そんなアンジェラのきわどい冗談に二人が面白そうに笑った。
その様子を慎重に観察し、メロディの心配は杞憂であることを確信する。
少なくともコンラッドの一番そばにいる執事の目には、メロディが彼の障害になるようには映っていない。コンラッドは娘としてメロディを大切しているのだ。
(でももし彼が、メロディが自分の娘ではないと知らなかったら――なんて、そんなこと有り得るのかしら)



