星降る夜に、あの日のキスをもう一度


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「エドガーは、旦那様の異名やあの見た目を知ってたのね?」

 コンラッドを見送ったあとにそう聞くと、エドガーは母親から写真を見せてもらったことがあるのだと言った。

「アン先生は知ってましたか?」

「いいえ、全然。旦那様に会うのは学生の時以来ですもの」

 それは事実だ。アンジェラは黒髪のコンラッドしか知らない。

「そうなんですね。俺はこちらに来る少し前に、母上から幻視の魔法について習ってたんです。その使用例写真の中に閣下もいたんですよ。ずいぶんカッコいい人だなぁと思って見てたら、最初に閣下の髪を金髪にしたのが母だって。そこで色々と……」

 幻視の魔法は難しい。国でも使える人が限られているにもかかわらず、「身近に使える人が何人もいるほうがおかしい」と、一瞬だけエドガーが子どもっぽい顔を見せた。

 この魔法にははっきりしたイメージ力や、安定した魔力の流れが必要だ。歌で言えば、何オクターブもの音域を滑らかに一音も外さず歌い上げるような、努力だけではどうにもならない部分があるのだ。
 天才肌のヴィクトリアは指をパチンと鳴らすだけの手軽さで変えて見せるが、アンジェラがその域まで来れたのは二十代になってから。それは必要に迫られて、ある意味裏技的に習得した。
 エドガーはあまり上手くできないと言うので、アンジェラ流のコツを伝授した。エドガーなら大丈夫だろう。

 それから、話しにくい本題に入った。


「あのね、エドガー。貴方がわたくしをここに呼ぶことができたのは、複数の要素が絡むことだと思うのだけど。その一つは、わたくしが元々ここで生きていた人間だからだと思うわ」

 アンジェラに自分以外の人生の記憶が三つもあることを知っているのは、アンジェラの家族以外には、今は亡きヴィクトリアの祖父とヴィクトリア、そしてエドガーだ。ヴィクトリアの夫もエドガーの妹もこのことは知らない。

 正確にはエドガーに話したことはないのだが、彼の家庭教師をしていた時になぜかバレた。当時彼が十歳の時だ(だからこそ、彼も前世の記憶持ちでは? と考えたのだけど、今のところその兆候はない)。

「勇者だと言うエドガーのご先祖の方は、たぶんわたくしが知ってる人だと思うの」

 そうして理由を話すと、彼は驚いた顔をした後、面白そうにニヤリとした。
 予想通りの反応であり、二人で情報を照らし合わせた限り、ほぼ間違いないだろうという結論に落ち着いた。


「エドワード・リンジー・ゴルド。彼はそんな立派な名前だったのね」

「先生は何と呼んでいたんですか?」

「リン」

 目を閉じれば、今も鮮やかに浮かぶ金色に輝く長い髪、不敵な笑顔。前世のアンジェラにとっては仲間であると同時に恩人だった人。

「あなた、リンに雰囲気が似てるわ」

 自分が知らなかったその後の世界を、エドガーが教えてくれる。リンは魔王を封印(・・)したと伝えられているそうだ。