星降る夜に、あの日のキスをもう一度



 日が暮れ、すっかり寝支度を整えてもまだ寝るには早い時間だったけれど、アンジェラはメロディを早めに休ませることにした。

「お父様たちにお休みの挨拶をしなきゃね」
「はい」

 リビングに戻ると、コンラッドとエドガーが何か話していた。まるで大人のようなエドガーの姿に少しだけおかしくなり、同時に心配になる。彼だってまだ十六歳になったばかりなのだ。

「パパ、おやすみなさい」

 父親に駆け寄ってギュッと抱き着いてくる娘に、コンラッドは一瞬目を丸くした後微笑んで、「おやすみ」と抱きしめ返した。

「エドガー様もまた明日ね」
「ああ。よく休めよ」
「うん」

 そうして目をこするながら戻ってくるメロディの手をとり、アンジェラも軽く会釈してメロディの寝室へと戻った。

 寝室は普段使われていなくても清潔な状態だ。大人用の大きなベッドなので、並んでも十分眠ることが出来る。
 シドニーとライラは夫婦なので一階の部屋を二人で使い、コンラッドは主寝室を、エドガーは客室を使うことになっている。

 横になると甘えるようにすり寄ってくるメロディを、アンジェラはそっと抱きしめた。初めてナタリーが甘えてくれた日を思い出して、瞼が熱くなった。

「アン先生、私の話、聞いてくれる?」
「ええ、もちろん」

 半分眠っているようなメロディに、アンジェラは微笑んで小さく返事をした。

「あのね、私のお母様はね、――お父様と、とても愛し合っていたそうなの」

 その言葉に軽くメロディの頭を撫でる。

「そう。だからこんなに可愛い娘が生まれたのね」

 そう囁けば、目をつむったままメロディはくすぐったそうに笑った。

「でもね、私のお父様はどこか遠いところに行ってしまわれたから……、生まれてくる、わ、私のために、お母様は――っ、パパと結婚、したんですって」

「そう」

 メロディの絞り出すような告白に、アンジェラは何でもないことのように相槌を打った。

 今日メロディの話を何度も考え、彼女に似ている顔をふと思い出した。名前はソニア・グリン。息子グレンの一つ年上の少女だ。
 グレンは男子校であるビクト学園の出身だけど、ビクトは今も女子校であるリリス学園との交流が盛んだ。

『リリスにすごい美人がいるんですよ。俺の好みではないけれど』

 学園祭に遊びに行ったアンジェラとナタリーに、こそっと教えてくれた美人がたしかソニア。当時すでに『年上の彼氏』がいると聞いた覚えがある。
 そして、卒業間近にその彼氏から捨てられたと一瞬噂が立った後、すぐに「とんでもなく素敵な年上の方」と結婚をし、噂は結局噂だったとすぐに消えた。