星降る夜に、あの日のキスをもう一度


 それからは、ひたすら互いの情報交換だった。何を知っているのか、どれだけ手の内をさらしていいのかを探り合うのた。結局のところ、それがまったくいらないことだったと知って、二人で大笑いしてしまったけれど。

 アンジェラが異世界にいた経験があること。
 彼女の息子と娘は姉夫婦の子であること等々。

 エドガーはメロディ同様、大人が交わす会話の端々から色々なものを読み取るようで、誰にも教えられていないのに知っていたことがメロディと同じくらいある。年上の男の子だけれど、自分が知っている男の子たちとはずいぶん違うと思った。

「あのね。さっきシドニーから教えてもらったんだけど、アン先生は、うちのパパの初恋の人なんですって」

 他の女性への扱いとは明らかに違う。そんな父親の姿に戸惑うメロディに執事がこっそり教えてくれたのだ。

「ああ、知ってる。というか、俺にとっても初恋の人だし」

「そうなの?」

「うん。今も理想の女性。――わかるだろ?」

「わかる」

 メロディが男の子だったらきっと、アン先生にほのかな恋心を抱いていただろう。
 今でさえ、こんなに大好きなのだ。
 初めて会ったけど、ずっと前から大好きだった。


 数年前までのメロディは、優しい気持ちとか、誰かを大好きなんて温かい気持ちにはまるで無縁だった。
 それを変えてくれたのがアンジェラの娘、ナタリーだ。

 何人も家庭教師を辞めさせたあと、メロディがのもとに来た新しい家庭教師のナタリーは、一言でいえば変わった先生だった。
 トゲトゲに周りを威嚇しているようなメロディに対しても臆することなく、いつも余裕があってどこか面白そうにしていた。雑談も楽しくて、その中でもナタリーの養母アンジェラの話にメロディは夢中になった。
 気付くとメロディは、話の中のアンジェラの優しさに、その強さに、ひたすら心惹かれた。

 いつの頃からか「アンジェラ様が、私のお母さまだったらいいのに」と思うようになっていて、日に日にその思いは強くなっていった。心底ナタリーがうらやましかった。
 本当のお母様が亡くなったのは同じなのに……。そんな風に想うことさえあったのだ(後からひどいことだと反省したけれど)。
 でもとうとう我慢できなくなって、ある日ナタリーに正直に自分の気持ちを打ち明けてしまった。しかも自分の予想した、かなり失礼なことまでをも口にしてしまったのだ!

 しかしナタリーの反応は全くの予想外のものだった。