星降る夜に、あの日のキスをもう一度


 口調がだんだん暁の狼になっていくのは、当時を思い出しているからだろうか。

「国に着いて落ち着いてから、リンドウには送りました」

「なっ。あいつ!」

「こちらの事情をすべて話しているから、個人情報は外部に漏らさない約束になってるんです。彼を責めないでくださいね」

 何かとてつもなくリンドウが八つ当たりされそうなのを感じ、慌ててかばう。
 個人情報を守るのも彼の仕事だ。年齢、国、その他諸々でかなり驚かせてしまったが、後に仕事でいい関係が築けている。
 逆に言えばアンジェラだって暁の狼がコンラッドだなんて知らなかったのだ。あえて消息を聞くようなこともしなかったけれど。

「もしかして、エドガーは貴女の――あの時の子では?」

「はっ? 違います! エドガーはヴィクトリアの子です。わたくしはあの子の家庭教師だっただけです」

「確かにヴィクトリアに似ている。でも貴女とも特別なつながりがあるように見える」

「それは、わたくしを助けてくれたのがヴィクトリアのおじい様だから、同じように私もエドガーを助けたからです」

 エドガーがアンジェラを、「初恋の人」「理想の女性」だと言っていたのは昔の話だし。

「というか、あの時の子ってなんですか⁉」

 どこからどんな誤解を受けているのか。

「貴女が消える前、あの洞窟で――忘れてしまった?」

 あえぐようなコンラッドの声が傷ついたように小さくなる。

「コンラッド。ご結婚されてる方にわたくしがこんなことを言うのもなんですけど」

「もう妻はいない」

「そうですが、そういう問題ではなくてですね。もう! なんでわたくしがこんな説明を」

 羞恥で溶けて消えてしまいたい。

「あのですね。貴方がしてくれたのが、いくら情熱的で、どんなに素敵なキスだったとしても、それで子供は出来ません!」

「――えっ?」

 顔を覆って下を向いてしまったアンジェラに、コンラッドの間の抜けた声が落ちてくる。

(えっ、じゃないわよ!)

「わ、わたくしは子供は育てましたけど、婚姻歴においては、どこに出しても恥ずかしくないくらい、そりゃあもう立派な嫁き遅れ(オールドミス)なんですからね!」

 しかも今後も嫁ぐ予定は皆無ですけど、何か?

「オールド? だって貴女は……外国に嫁ぐのに卒業を早めたって」

「学園の話ですか? 卒業を早めたのは、姉たちの訃報を聞いてヒィズルまで子どもたちを迎えに行くためです。外国に嫁いだのは、アンジェリカ・ドルーのことでしょう?」