星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 アンジェラはコンラッドの言葉に、頭の奥が噴火するかと思うほどカッと熱くなる。言葉を失ってハクハクと口を開け閉めするが、うまく言葉が出てこない。

「子供が出来てればいいと思ってた。そしたら貴女は私に連絡をしてくるって、そう期待してたんだ」

 怖いほどに強い眼差しは、あの頃のままだ。

『キリとナズナの父親になりたいと言ったら?』

 そう聞いてきた異国の男。愛されているのでは? そう感じたことが何度もあった。でも彼が見ているのはアンジェラではない、スミレという架空の女だ。
 アンジェラだったとしても、応えることなどできなかったけれど。

 あの日、祖父の危篤の知らせに急きょ国に帰ることになった。
 何年も前から準備をしていたけれど、それが少しだけ早まったに過ぎない。
 もともと黙って消えるつもりだったから、熱で苦しむ狼のことが気になっていたけれど、黙って離れた。シェダイで生きてた頃の力があれば癒すこともできたのに……。そう思いながら。

「旦那様?」

 それとも狼と呼ぶべきか。

「コンラッド。私の名前はコンラッドだ。――アンジェラ」

 きちんとアンジェラだと分かっていて、アンジェラ本人に向かって話している。
 そのことに再度衝撃を受けて、カラカラに乾いた唇をなめる。何がショックなのかもう分からなくなってきた。

 ふいに唇が近づいてきて、慌てて両の手のひらで止めた。

(何が起こってるの?)

 混乱しながらも、手を外そうとするコンラッドの手に負けまいと力を籠める。

「コンラッド、話を聞いてください」

「聞きますよ。ナタリー先生はナズナなのですか?」

「そうです。ヒィズル用の名前がナズナでした。義兄が付けた名前です」

 義兄には半分ヒィズルの血が流れていた。混血で使用人。その身分差から結婚を反対された。彼は姉を連れて駆け落ちした時、父親の故郷を頼ったのだ。

「キリは元気ですか? 今の名前は?」

「ええ、元気です。名前はグレン・ドランベル。結婚して、もう子どもが二人おりますわ」

 顔をぎりぎり寄せられながらの会話だとは思えないけれど、それでも彼が子どもたちを気にしていてくれたことに感動する。

「なぜ便りも寄こさなかった? ヤマブキが心配していた」