星降る夜に、あの日のキスをもう一度


 きょとんとしていると、近くの露店の青年が「しょうがねえな」と苦笑している。そちらを見てみると「あいつら、いい男を見つけるといつもそうなんだよ。幼馴染でライバルってのかね? 自分の魅力でいかに客を呼べるかを競ってるんだ」と教えてくれる。いわゆる賭け事に近いものらしく、負けたほうは買った方にいくばかの金銭を払うとか。

 バカバカしくはあるが、確かに魅力的な女性たちだ。市の活性にも一役買っているのかもしれない。
 コンラッドは騒ぎを起こしたくないのか、黙って離れようと何度も試みるも失敗している。アンジェラに気づいたのか、ハッと身をこわばらせる様子に思わず吹き出しそうになった。

(どうしましょ。あんな可愛い顔をするなんて意外すぎるわ)

 アンジェラは彼にゆったり歩いて近づき、女の子の一人の手をグイッと引きはがす。そのままコンラッドの腕に抱き着き、「お待たせ」と満面の笑みで彼を見上げた。その後女の子たちを見回し「うちの亭主に何の用かしら?」と、心底不思議そうな顔を見せた。

「え、あの。旅の人みたいだから、うちの品を安くするから来ないかって、声をかけてたのよ」

 突然現れたアンジェラの無害そうな笑顔に毒気を抜かれたように、女の一人がそう答えた。

「あら、なんのお店? これから食料品と衣料品を見に行こうと思ってるんだけど」

 アンジェラの、「いい子ね」と言わんばかりの柔らかく甘い笑顔に、三人はそれぞれ「いい店」を教えてくれた。まるで、褒めてほしくて尻尾を懸命に振る子犬のようだ。

「ありがとう、お嬢さんたち」

 そう言って腕を組んだまま踵を返せば、彼女のうちの一人がハッとしたように「お姉さん! 旦那、いい男ね!」と大きな声をかけてくる。思わず吹き出しそうになりつつも、振り返ってにっこりと笑って見せた。

「ええ。やっと捕まえたのよ。いいでしょ?」

 そう言ってみせれば、深く頷く女たちの姿が微笑ましい。なんとも可愛い娘たちだ。

 コンラッドも金縛りが解けたのか、
「私はずっと貴女一筋ですよ」
 と頬にキスをしてくる。

(意外とノリのいい人だったのね)

 背中に華やいだ悲鳴を聞きながら、教えてもらった食品の店にまず向かった。