星降る夜に、あの日のキスをもう一度


「スミレはなぁ、とうはたってるけど、いい女なんだよなぁ」

 酒場ではよくそんな話が出る。

「働き者だし、魔法弓士としても優秀。おまけにイイ女とくれば、男がほっとかねえよ」
「だがひとり身なんだな?」

 コンラッドが透き通った酒をちびりとやりながら伺えば、男は大仰に頷いて見せる。

「子供で手いっぱいだから、亭主の面倒までみてる暇はねえってさ」

 そう言って男たちは大笑いし、奥で女衆が訳知り顔に深く頷くのが見える。

「でもなぁ。男手は必要だと思うぜ。子どもたちも、あと五年もしたら巣立つだろう。その時にか弱い女一人ってのも寂しいんじゃねえかなぁ」

「とかいっておまえ、この前スミレの尻撫でて張り倒されてたじゃねえか」

 お呼びじゃねえと囃子(はやし)立てられた尻撫で男は、
「だっていい尻してるじゃねえか。ありゃあ見た目より、体は若いと見たね」
 とスケベ面をさらし、周りからどつきまわされていた。

「よお、暁の。尻を撫でた話くらいで、そんな射殺しそうな目をするな。たかが酔っ払いのたわごとだ」
「リンドウ」

 小声で、しかし明らかに面白そうな声音でコンラッドに声をかけてきた男はリンドウ。仕事上の相方であり、ヒィズルで唯一コンラッドの正体を知っている男だ。

「そんな目はしてないだろう」
「いんや、してたね。明らかに俺の女に何しやがるって目だった」

(俺の女……)

「おまえ、スミレに惚れてるだろう。いっそ夫婦(めおと)になっちまえば? 子供たちもおまえに懐いてるし、問題ないだろ。姉さん女房も悪くないぞ」

 面白そうに、だが真剣な目でリンドウはそう訴えてくる。
 最初にスミレをここに案内した縁もあり、ずっと彼女を気にしているらしい。

「俺も、ヤマブキがいなければ嫁にしたいくらいだよ――――あ、冗談だからな。言うなよ!」

 ヤマブキはリンドウの妻だ。年は五つほど上だと言ったか。スミレと同世代で、仲良くしている。

「そうだな」

 それは黙ってると言う意味か、それとも……。
 窺うように見てくるリンドウに、コンラッドを軽く肩をすくめた。