星降る夜に、あの日のキスをもう一度

「ひゃあ!」

 メロディの、どちらかと言えば楽しそうな悲鳴が響く。
 怖がって両手で顔を覆っている割に、指のあいだからしっかり目が見えていて、アンジェラは思わず吹き出した。その目に映っているのは父親の姿だけだろうけれど、予想外に肝が据わっている幼い令嬢の姿が頼もしい。

「メロディのお父様はすごいわね?」

 コンラッドの株を上げてあげようくらいの気持ちだったけれど、メロディの目が何やら楽しそうに輝いたので、アンジェラもつられてニッコリ笑った。

 今庭(仮)では、さっき倒した飛竜の解体作業が行われている。
 アンジェラがするつもりだったものの、なぜかコンラッドが行うことになったのだ。

「貴女の仕事ではありませんよ」

 そう言われてみれば確かにそうかもしれないけれど、コンラッドの仕事でもないだろう。だいたい一家庭教師代理、しかも相当の年増女をお姫様のように扱うコンラッドに、アンジェラは背中がむずむずして落ち着かない。
 メロディはといえば、最初は父親を見て戸惑った顔をしていていたものの、何か執事に聞いたあと、徐々に面白そうな顔になってきた。

(まあ、不愉快じゃないならいいでしょう)

 何を聞いたのか、とっても気になるけれど。ええ、すごく気になるけれど。

 アンジェラが清浄魔法をかけているので、血液などは飛び散らない。
 コンラッドがバターでも切るかのように飛竜を解体していく横で、エドガーが手際よく部位を整理していく。羽や牙、爪などはこちらでも高値で売れるだろう。売れなくても加工して武器にすることもできるし、こちらのほうがエドガーのためになるかもしれない。

「アン先生。あの飛竜の鱗、綺麗ですね」

 内緒話をするように、メロディがアンジェラの耳元でささやく。
 鱗は一枚一枚が大人の手のひらよりも大きいが、黒曜石のような光沢があり宝石のような魅力がある。アンジェラなら矢じりなどに加工するところだ。
 記憶の底を探れば、似たようなものをお守りとしてペンダントに加工した映像が思い浮かぶ。

「一枚頂いて、アクセサリーにしてみましょうか」

 そう提案してみれば、メロディがパッと顔を輝かせた。

「いいの?」
「ええ。勉強にもなるしね」
「勉強に?」

 驚いたように目を瞬かせたメロディは、近くに誰もいないのを確認すると再びアンジェラの耳に口を寄せる。

「先生は、いくつかの異世界にいったことがあるって本当?」