エドガーの力を封じているのはアンジェラだ。
順当にいけば解錠などいらない術だけど、エドガーはとっさに力を解放しようとしたと考えられる。
「エドガー。その時に何を考えたのか教えてもらっても?」
コンラッドの問いに、エドガーは記憶をたどるように視線を少し上に向けた。
「力。安全。あと、錨のようなものでしょうか」
「なるほど。無意識にわたくしを召喚しまった。そういうことなのね」
普通ならあり得ない、数多の偶然が重なった事故だ。
しかもアンジェラ自身に魔力が多かったため、自分がいた場所及び人まで巻き込んでしまった。妊婦である娘を巻き込まなかった分マシと言えないこともないだろうか。
「どうせなら、わたくし一人を呼べばよかったのに」
実際そうなると家庭教師ドタキャンで、やっぱり娘に叱られる未来しか見えないけれど、他人を巻き込むよりずっといい。
「いえ。先生、ガキみたいなことしてすみません」
頭を下げるエドガーがしたそれは、無意識に母親を呼んでしまうに近い行為だった。けれど、アンジェラに彼を責める気はまったくない。むしろ今はエドガーと、巻き込んでしまったコンラッドたちを、それぞれどう無事に帰すかが問題だ。
「あの飛竜は、飛ばされた先で遭遇したの?」
「はい。飛ばされた先が割と大きな街中だったんですけど、そこにちょうど飛来したのを見つけたんです。明らかに飢えてて、小さな子どもを狙ってたから、囮になろうと思って引き寄せてあちこち走り回ってました」
「そう。頑張ったのね」
他に仲間はいない単体だったらしいので、群れからはぐれ迷った末に、空腹で町を襲おうとしたと考えられる。
ある程度のところで倒すことはできただろうけれど、エドガーの特技は剣だ。
引き寄せるまでもう少し時間がかかっただろう。
とにかく、エドガーも街の人も、メロディたちも無傷で本当によかった。
「あの、旦那様」
「なんでしょう」
「どうやらわたくしのほうがよっぽど、土下座をする必要があるようですわ」
本気でそう言ったアンジェラに、コンラッドは、「そんなことは絶っっ対に、しないでくださいね!」と、目をむいた。
「でも、わたくしがここにいなければ、旦那様たちはこんな目にあわなかったわけですし」
申し訳ないと謝罪の言葉を述べようとするも、コンラッドから、
「貴女のせいではない、ただの事故です。謝らないでください、アンジェラ」
と、なぜか強く名前で呼ばれてしまえば、雇われた身としては押し黙るしかなかった。



