星降る夜に、あの日のキスをもう一度


   ◆

 お別れは祝福ムードの中で行われた。

 転移のためにコンラッド、メロディ、シドニー、ライラ以外は館の外に出たのだが、サシャ達が近くで花を摘んではアンジェラの足下に置き、ドレスの裾に口づけをする。その、貴人への敬意をあらわす行為に一番面白がったのがマリオンで、
「そのままにっこり笑って受けときなよ」
 と愉快そうに笑った。
 大魔導士の慶事に立ち会えたことが、今後の吉兆を表していると喜んでいる人間たちの姿に、マリオンの中で溜飲が下がる思いらしい。

(ああ。偶然とはいえ、このことで、マリオンの中の思い出が浄化されているんだわ)

 そう感じたアンジェラは気恥ずかしいのを精一杯我慢する。窓からメロディが楽しそうに見ているので、彼女を喜ばせるためにも微笑みを浮かべて祝福を受けた。
 最後にエドガーまでが彼らの真似をしてドレスの裾に口づけたので苦笑したけれど、後ろからメロディが「エドガー様とは私が結婚してあげますわ」と叫ぶので、思わず笑ってしまった。
 メロディに言わせると、失恋したエドガー(誰に?)には、自分がいるから元気を出してとのことらしい。

「私はアンジェラママの娘になるんですもの。きっと素敵な女性になりますわ」
 と胸を張るメロディに、エドガーが面白そうに笑う。

「先生。そういうことらしいんで、アデルには、学園で俺の伴侶探しはしなくていいって言っておいて」

 彼が明らかに笑うのを我慢しながらそんなことを言うので、アンジェラはコンラッドと目を合わせ、一度頷きあってから「そうね、エドガーもすでに家族ですものね」と意味深に、にっこりと笑っておいた。

「えっ?」
「ふふ、楽しみね」
「えええっ?――――って。うーん、まあ、いいや。十年後を楽しみにってことにしておこう」

(あら、本気?)

 冗談とも本気ともつかない表情で、二人してにっこり笑い合う。
 みんな今は面白がっての軽口でも、五年、六年先のことは分からない――そんな気がするから。


「アンジェラ様、時間です」

 トーマが合図をする。使える時間は十分にも満たないため、アンジェラはコンラッド達に頷きエドガーに手を振ると、ヴィクトリアの力を頼りに、ためらうことなくイリスに戻った。

「おかえり、アンジェラ」

 ヴィクトリアの呼びかけに頷くと、アンジェラは間髪を入れず館ごと包むイメージで一気に引き上げ、コンラッドたちを元の場所に戻す。
 ウィング家にはヴィクトリア以外に、彼女の夫ジョナスや、グレンやナタリーたちが総出でその様子を見守っていたけれど、大きな稲妻が何度か光った以外、まるですべてが夢だったかのように元に戻った。


 そして、それから約一か月後――。