星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 瞬間、シドニーが一瞬むせるのを我慢したかのように小さく咳ばらいをした。
 メロディのリボンは求婚の捧げ物の代わりなのだろう。目をしばたたかせるアンジェラに「あの。別にパパと結婚してとまでは言いませんわ」と、少しだけ困ったように言う。メロディの後ろでコンラッドがショックを受けたようなジェスチャーをするので、そのおどけた演技にアンジェラは少しだけ噴出しそうになった。

「ねえ、メロディ。わたくしがママになるってことは、ナタリーはあなたのお姉さんになるわよ? もうすぐ赤ちゃんが産まれるからメロディは叔母さんってことになってしまうけど、それでもいい?」

 少しだけいたずらっぽくそう尋ねると、メロディは目を丸くした後、勢いよく頷いた。

「私の弟や妹が生まれるのでも嬉しいけれど、甥や姪でも大歓迎だわ」

 キラキラ光るメロディの灰色の目が、興奮で微かに青みを帯びている。

「そう? でも、あなたのパパはどうかしら。メロディが私の娘になってしまったら、パパは寂しいんじゃないかしら」

 こっそりとコンラッドに目をやると、二人のやり取りに笑いをにじませていた彼の目と合う。コンラッドの口元が一瞬大きく弧を描いたあと、彼は至極真面目な顔でアンジェラの側に跪いた。

「ああ、アンジェラ。でしたら私と結婚してください。花や捧げ物はイリスに戻ってからになりますが、どうかこの求婚を受けては下さいませんか?」

「――パパ、そこはちゃんと好きですって言って!」

 こっそりとメロディに叱りつけられ、コンラッドは「アンジェラ。愛してます」と真面目な顔のまま付け加える。

 エドガーとマリオン以外が息を飲んで二人を見つめる中、アンジェラは少しだけ考えるふりをしてからコンラッドの差し出した手を取った。

「はい、コンラッド。喜んでお受けします」

 一瞬の静寂のあと、メロディとライラの悲鳴が上がり、なぜかシドニーと、少し離れていたところにいたサシャや彼女についていた女性騎士までが涙ぐむのが見える。

「アンジェラ様、本当にパパと結婚してくださるの?」

 一通り悲鳴を上げたあと、「冗談ではないよね」とでも言うような顔をするメロディに、アンジェラは「ええ、結婚します」と笑った。

「コンラッド――あなたのパパはね、わたくしの初恋の人なの」

 その真実に、メロディたちの悲鳴がまたもや上がり、シドニーが驚いたように「おおっ」と言うのが聞こえる。

 だがそのあと、何かに気づいたように不安そうな顔をしたメロディをコンラッドと二人で抱きしめたアンジェラは、
「家族になりましょう、メロディ」
 と、はっきり言った。

 家族になりましょう。
 コンラッドとメロディ、それからグレンやナタリー。血の繋がりはないけれど、愛だけはたくさんある。だから一緒に、大きな大きな家族になりましょう。