星降る夜に、あの日のキスをもう一度


「ありがとう、先生。俺、わりと本気で、先生と同世代に生まれたかったよ」
「エドガー?」
「そんな風に思ってくれるのは、完全に俺が未熟なせいだろう?」
「そんなことは」

 ないと言おうとしたものの、至近距離で見るエドガーの目には寂しそうな、それでいて悔しくてたまらない怒りのような色が浮かんでいて、アンジェラは言葉が止まった。

 彼はまだ十六歳になったばかりでも、ここに来ることを自ら決め、覚悟を決めた男なのだと、アンジェラはその時やっと理解した。
 セシルは子どもだった。彼に比べて無知で幼くて、何も見えてない子供だった。

 エドガーには選ばれた者だと言う気持ちもあっただろう。思いきり力をふるえないイリスより、どこかで自分の力を確かめたいという好奇心もあっただろう。でも彼は単純に、「助けたい、役に立ちたい」と思っている。セシルよりもずっとしっかりしているし、頭もいいし、見た目よりずっと大人だ。
 母親であるヴィクトリアは何より息子を信じていた。他人のアンジェラのほうが、彼のことを無意識に侮っていた。
 それに気づいてアンジェラは全身から力が抜けた。羞恥で身が縮む。

「ごめんなさい、エドガー。わたくしが傲慢だったわ」
 アンジェラの謝罪に、エドガーの目が優しく細められる。

「俺、多少の痛みなんかには負けないから。ちゃんとイリスに帰って、学生生活も送るって約束する。身体のほうは先生がガードを付けてくれたって知ってるし。もしものときの精神面は、まあ大丈夫じゃないかなぁ」

 額を外してエドガーがマリオンを見ると、彼女は明るく笑って頷いた。

「ぼくがいるよ、アンジェラ」
「マリオン」
「ぼくはその為について行く。アンジェラがしたかったことは分かってるつもりだし、それなりに役に立つだろ。君は自分の世界に帰ったほうがいいって思ってたし、これが最善だ。――まあ、色気的な意味では、アンジェラの代わりは無理だけど」

 真剣な目をした後、くねっとシナを作ったマリオンにアンジェラとエドガーが同時に噴き出し、コンラッドは上品に顔をそむけた。

「だから先生は、向こうで待ってて。――あ、もしもの場合は、引っ張り上げてもらうかも……しれ、ない、し……?」

 万が一、急遽イリスに戻る必要な場面が生じたら。
 そんなことを考えたのか、アンジェラとエドガーはハッと顔を見合わせて同時に頷く。

「コンラッド」

 ささやきに近いアンジェラの呼びかけに、彼がすぐそばに立つ。