星降る夜に、あの日のキスをもう一度


(ああ。貴方だったのね……)

 初めて愛した人が、人の世に戻って新しい生を受け、今アンジェラの側にいる。

(劉帆《りゅうほ》様……、いえ、コンラッド。ここにあなたがいるのは、わたくしの為だと自惚れてもいいですか?)

   ◆

 眠っていると思っていたコンラッドがアンジェラの髪を指ですき、「夢を見た」と呟いた。
 驚いて見上げると、アンジェラを抱き寄せたコンラッドがいくつか夢の話をする。それは確かにアンジェラが見たものとは違い、今世のものだけだった。

「なぜか私は幽霊のように学生時代の私たちを見ていました」

 夢の中でコンラッドは、アンジェラを縛る黒い呪いがはっきり見えていた。
 しかし、仮装パーティーでキスをして、アンジェラの呪いに綻びが出来ていた。
 洞窟でのキスで、さらにひびが入った。
 アンジェラが感じていたことを、目覚めの前に微かに見えたものを、コンラッドは夢の中ではっきり見てきたという。

「今夜、貴女の呪いが解けたんだ」

 二人で答え合わせのように話した後、コンラッドがはっきりそう言いきった。アンジェラの中でそれが正解だと確信したが、その意味に気付いて頬が熱くなり、思わず両手で顔を覆ってしまう。
 コンラッドは幸せそうにくすっと笑いをこぼし、アンジェラの髪をかき上げて額にキスしたあと、ゆっくりとその手を外した。彼の目には満足そうに輝き、アンジェラは恥ずかしくなって目をそらしたいような、じっと見つめていたいような不思議な気持ちになった。

「もし、私が熱で見た幻想(ゆめ)が現実だったら、十五年前に呪いが解けていたんですね」

 少し悔しそうにつぶやくコンラッドの声に、アンジェラは優しく微笑んだ。
 似た夢を見ても、彼は己の前世が誰だったかには気づいていないようだ。彼が知るのは今世だけであり、それでもアンジェラを見つけ、愛してくれた。これ以上の幸せがあるだろうか。

「いいえ。すべて必要なことでしたわ。あの時のわたくしは偽りの姿だったんですもの。呪いが解けていたとしても、ずっと貴方の愛を信じ切れなくて苦しんだと思うの」

(だから今でよかったの)

 アンジェラは少しだけためらった後、決死の覚悟で彼の唇に触れるか触れないか程度のキスをする。
 コンラッドは一瞬驚いたように目を瞬かせた後幸せそうに笑った。

 まもなく夜が明ける――。