星降る夜に、あの日のキスをもう一度


 ――ねえ、〇〇様。あなたを誰よりも愛していました。
 叶わないと分かっていても愛さずにはいられなかったのです――

 優しくて切ない別離の言葉。覚えてもいないのに胸が震える。
 見えてきたのは仙人の世界と思われるような静かな世界だった。
 記憶にないのは他の遠い前世と同じなのに、ここだけは普通の世界とは違うと感じる。

(生と死のはざまにある休憩所だ)

 誰かにそう教えられ、アンジェラはコンラッドと共にその世界を見つめた。
 静かな世界。小さな宿と庵。桃の木には常に実がなり、甘い香りがしている。

(ああ、そうだ。私はここで、初めての恋をした)

 彼は人でも仙でもない男だった。大事な妹を守るために人としての生を捨て、迷い込んだ魂に癒しを与え、ただ静かに背中を押してくれる男。

(〇〇様、だーい好き)

 そこに迷い込み働くことになったいつかのアンジェラは、何千回も彼に想いを伝え続けた。初めての気持ちは胸の内に押し込めておくには大きすぎて、どうしてもあふれ出てしまう。それでも素直に気持ちを伝えられることが嬉しかった。
 彼が「はいはい」と、ほんの少しだけ困ったように笑ってくれる。それだけでよかった。

 側にいたかった。でも駄目だと知っていた。だから離れた。
 どの世界でも二十余年を超えることはできないとわかっていたのだ。それが、時のない世界であっても同じだったから。

 そして人の世に戻り、再び非業な死を迎えた。何度も何度も何度も。
 そんな前世の中で、一瞬だけ彼を見つけたと思った。ありえないのに、一瞬だけ目が合った。大事な妹を守ってくれた。それだけですべてが報われた気がした。

 そのとき、一筋の光がアンジェラに小さな希望を贈った。
 どこから来たかもわからない淡い光は、「あなたを真に愛する男と結ばれた時、この呪いが解ける」と早口で唱えてくれた。
 それが本当に声だったのかどうかも分からない。どんな存在の祈りかもわからない。
 あまりにも微かで頼りない、それでもなぜか唯一の救いだと分かる――。

 やがて今のアンジェラの生が見えてきた。