星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 コンラッドの質問に、アンジェラは小さく笑う。大きな力を見せても驚かない彼に、もしかしたら知っているのではと思っていたところだった。

「エドガーが教えたんですか?」
「それもありますけど、ここに来てからのアンジェラは、まるでこの世界を知っているかのような感じでした。あっさり通貨を手に入れるし、さっきの獣もよく知ってる感じでしたね。あれはヒィズルでもイリスでも、見たことがない獣だったのに」

 言われてみればもっともな話だ。
 コンラッドはアンジェラの三つの前世も知っていた。知っていてなお、こんなに優しくしてくれる。
 それでも短命だった理由を聞けば、彼は考えを改めるかもしれない。

「アンジェラの魔法発動の言葉は、前世関係ですか? 昔はヒィズルの言葉かと思ってました」

 その言葉をきっかけに、ポツリポツリと、誰にも聞かせなかった話をする。

 解錠と施錠の呪文は、ランプの魔人の真似だということ。
 とぼけた魔人は自分のことを大魔王と呼んでいて、一緒に旅をしてたこと。
 でも最終的に賊にランプを奪われ、アンジェラは嬲り殺しにされたこと。

 この世界では父親に売られたこと。
 救ってくれたエドガーの先祖と共に、当時、鴇色の魔術師と呼ばれていた男と戦ったこと。
 数々の出会いと別れの後、色々あって処刑されたこと。

 日本という世界には魔法という個々の力のかわりに、科学という力であふれていたこと。

「――姉と妹がいました。わたくしは病弱で、家よりも病院にいる時間のほうが長かったかもしれません。家族仲は良いと思ってましたけど、自分のせいで経済的にも精神的にも苦しめていることを理解していました。だからある日、何か嫌なことがあったのでしょう。見舞いに来た妹に暴言を吐かれました」

 死ぬなら早く死ねばいい。
 泣きながら叫んだ三つ年下の妹は、アンジェラのせいで何か辛い思いをしていた。

 すぐに「ごめんなさい、本気じゃない」と言った妹を病院の出口まで送っていったとき、
「トラックかな。大きな車がガラスを突き破って飛び込んでくるのが見えました。日本の車は金属製で、とても頑丈なんです」

 今も目を閉じれば、ストップモーションでガラスが飛び散る一枚一枚まで見えそうな気がする。

「わたくしはとっさに妹を突き飛ばしました」