星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 どちらのものか分からないほどに響く、強い鼓動にめまいがした。それでもアンジェラを抱きしめる腕が震えていることに気づく。

「コンラッド?」

 見上げると彼の目には悔恨の色が浮かんでいて、アンジェラの心臓が一度強く胸を打った。

「アンジェラ、私はすぐに貴女を追いかけるべきだった。次の日なんて待つべきではなかった。思い出の中ではなく、実際に貴女を支えたかった!」

 本気で後悔しているコンラッドに対し、アンジェラの胸に優しい思いだけが溢れてくる。

(ああ、この人だったんだ――)

 信じられなくて、でも不思議なほどストンと納得した。仮面をつけて別人のように振舞ったことで素を出せたのは、アンジェラも同じことだ。

「その気持ちだけで十分。十分よ、コンラッド。ありがとう」

 昔よりもずっとたくましくなった彼の背に、アンジェラはそっと手を回す。

「貴方がいたから、わたくしはこんなにも長く生きられたんだわ……」

 無意識にこぼれたアンジェラの言葉に、コンラッドがはっと身を離す。
 まじまじと見つめてくる視線を受け止めながら、アンジェラは自分の言葉を反芻して小さく頷いた。

「十八歳の時に貴方に口づけられて、わたくしは二十歳を超えることが出来た。二十五歳の時に、暁の狼に口づけられて、わたくしは三十歳を超えることが出来た。――どちらのキスの後も、姉の訃報や祖父の危篤の知らせが入って苦しんだけれど――わたくしの代わりに、彼らの命を奪ってしまったのではないかと苦しんだけれど、それでも……」

 それでもアンジェラを生かしてくれたのはコンラッドの愛だったのだと、誰かに囁かれたかのように不意に納得した。

 コンラッドは意味が分からないだろう。指でアンジェラの後れ毛を耳にかけながら、微かに首を傾げた。

「もしかしてキスがダメだと言うのは、不幸な知らせを聞きたくないから?」

 こくんと頷く。

「意味のないことだと分かっているの。危篤は嘘……というか、たぶん一時期本当に心配なことがあったのでしょう。姉たちが亡くなったのも、知らせより半年以上も前のことだったと分かってる。貴方のキスは関係ない」
「それでも、怖かったんですね」

 もう一度頷くと、コンラッドは優しくアンジェラを引き寄せて、今までで一番優しく抱擁した。それは労りと慰め。そして、包み込むような大きな愛。

「貴女が未来を怖がるのは、前世のせいですか?」