星降る夜に、あの日のキスをもう一度

 コンラッドの部屋から通じる狭い階段を上ると、思いのほか広々とした屋上に出た。

「ここは母が好んで整えた場所なんですよ」

 コンラッドが小さな光を屋上にあったランプに灯していく。その光の中、ほのかに浮かんだのは美しい屋上庭園だった。

「綺麗ですね」
「ありがとうございます。今は両親が遠方にいるのですが、いつ母が来てもいいよう手入れだけは欠かさないようにしています」

 初めてこの館を見たときにどこか寂しそうに見えたのは、本当の主人が遠方にいたからだったようだ。廊下などにも飾られていた神話のモチーフがあちこちにあり、幻想的な雰囲気になっている。

「メロディはよくここへは来るのですか?」
「いえ」
「あら、どうして? こんなに素敵な場所なのに」

 不思議に思って首をかしげると、コンラッドは少々呆れたような笑顔を見せた。

「実はここは、母の言いつけで子どもは立ち入り禁止なのですよ」
「まあ。そうなんですね」

 アンジェラから見ればもったいない話だけれど、よく見れば柵のない屋上庭園は、子どもが遊び場にするには危険だと納得する。

 コンラッドにエスコートされながらベンチに腰を掛け、アンジェラは広がる星空を見上げた。
 雲一つない空には月もなく、美しい星が一面に広がっていた。

(この空をゆっくり眺める日が来るなんて思わなかった)

 前々世では、野営の時などよく空を眺めた。火を焚き、ぽつぽつと話をしながら過ごした日のことが、まるで本で読んだ出来事のようだ。
 さらりと過ごしやすい空気の中、飽きることなく無心で空を見ていると、ふとコンラッドがこちらを見ているのに気付く。その目には称賛の色が浮かんでいて、アンジェラは恥ずかしくなって目を伏せた。

「旦那様は空を見ないのですか? 今夜はとても綺麗ですよ」
「アンジェラは、星を見るのが好きなんですね」
「ええ、好き」