翌朝、激しい雨は上がったものの、空はどんよりとした分厚い雲に覆われていた。
睡眠不足のせいで頭が重い。
登校中、蓮くんは私の手をいつもより強く握りしめ、何度も「大丈夫?」と顔を覗き込んできた。
私は無理に笑顔を作って頷くことしかできなかった。
「じゃあ、また放課後。どこにも行かずに俺のこと待ってて」
教室の前で、蓮くんは私の髪を愛おしそうに撫で、教室へと向かっていった。
その背中を見送りながら、私は小さく息を吐く。
──ガラガラ。
朝のホームルームのチャイムと同時に、担任の先生が教室に入ってきた。
その後ろに、見慣れない男子生徒が一人、従うように立っている。
「よし、席につけ。急だが、今日から我がクラスに編入することになった転校生を紹介する」
その瞬間、教室の女子生徒たちから小さな歓声が上がった。
すらりとした高い身長に、爽やかに整った顔立ち。はちみつ色の髪が、教室の蛍光灯に反射してきらきらと輝いている。
一見すると、誰もが好感を持つような「お日様」みたいな男の子。
だけど、その顔を見た瞬間、私の全身の血の気が一気に引いた。
「後藤太陽です。前の学校からは急な引っ越しで来ました。みんな、よろしくね」
にこりと、眩しいほどの笑顔を浮かべる彼。
──太陽。
その明るい名前に反して、私の記憶にある彼は、底なしの暗闇そのものだった。
中学時代、私を信じ込ませ、優しさの裏で精神的に追い詰め、最後には奈落の底へ突き落とした、最悪の元カレ。
「後藤、席は……橘の前の席が空いてるな。そこを使ってくれ」
「はい。よろしくお願いします」
太陽は先生に一礼すると、迷いのない足取りでこちらへ歩いてきた。
一歩、また一歩と近づくたびに、私の心臓が嫌な音を立てて跳ね上がる。
彼は私の前の席にバッグを置くと、ゆっくりと振り返った。
「やっと見つけたよ、紬」
周りの生徒には聞こえないほどの低い声。
その瞳はちっとも笑っていなかった。優しげなのに、どこか狂気を孕んだ濁った瞳。恐怖で身動きが取れなくなった私を、太陽は楽しそうに見つめ、何事もなかったかのように前を向いた。
睡眠不足のせいで頭が重い。
登校中、蓮くんは私の手をいつもより強く握りしめ、何度も「大丈夫?」と顔を覗き込んできた。
私は無理に笑顔を作って頷くことしかできなかった。
「じゃあ、また放課後。どこにも行かずに俺のこと待ってて」
教室の前で、蓮くんは私の髪を愛おしそうに撫で、教室へと向かっていった。
その背中を見送りながら、私は小さく息を吐く。
──ガラガラ。
朝のホームルームのチャイムと同時に、担任の先生が教室に入ってきた。
その後ろに、見慣れない男子生徒が一人、従うように立っている。
「よし、席につけ。急だが、今日から我がクラスに編入することになった転校生を紹介する」
その瞬間、教室の女子生徒たちから小さな歓声が上がった。
すらりとした高い身長に、爽やかに整った顔立ち。はちみつ色の髪が、教室の蛍光灯に反射してきらきらと輝いている。
一見すると、誰もが好感を持つような「お日様」みたいな男の子。
だけど、その顔を見た瞬間、私の全身の血の気が一気に引いた。
「後藤太陽です。前の学校からは急な引っ越しで来ました。みんな、よろしくね」
にこりと、眩しいほどの笑顔を浮かべる彼。
──太陽。
その明るい名前に反して、私の記憶にある彼は、底なしの暗闇そのものだった。
中学時代、私を信じ込ませ、優しさの裏で精神的に追い詰め、最後には奈落の底へ突き落とした、最悪の元カレ。
「後藤、席は……橘の前の席が空いてるな。そこを使ってくれ」
「はい。よろしくお願いします」
太陽は先生に一礼すると、迷いのない足取りでこちらへ歩いてきた。
一歩、また一歩と近づくたびに、私の心臓が嫌な音を立てて跳ね上がる。
彼は私の前の席にバッグを置くと、ゆっくりと振り返った。
「やっと見つけたよ、紬」
周りの生徒には聞こえないほどの低い声。
その瞳はちっとも笑っていなかった。優しげなのに、どこか狂気を孕んだ濁った瞳。恐怖で身動きが取れなくなった私を、太陽は楽しそうに見つめ、何事もなかったかのように前を向いた。



