あの日以来、麗奈の陰湿なあざとさは加速していった。
学校の廊下ですれ違うたび、麗奈は蓮にしか聞こえないような声で「蓮くん、陸上辞めても相変わらずモテるんだね」「あの怪我、本当に惜しかったよね」と、二人の『共有の思い出』をわざと匂わせてくる。
そのたびに蓮は、私の肩を痛いくらいに抱き寄せ、麗奈を睨みつける。
「馴れ馴れしくするな。俺に話しかけるなと言ったはずだ」
冷徹に突き放す蓮の横顔は、信じられないくらい格好いい。
──なのに。私の胸のモヤモヤは、消えるどころか大きくなる一方だった。
放課後、いつものように蓮の部屋で二人きりで課題をしていたときのこと。
蓮が飲み物を取りに席を外した隙に、私は見てはいけないものを見てしまった。
本棚の奥にひっそりとしまわれていた、中学時代の陸上部のアルバム。
そこには、今よりも少し幼い、だけど今と同じように眩しい笑顔の蓮と──その隣で、蓮の腕に抱きついて向日葵みたいに笑う、麗奈の姿があった。
『私のときも、毎日「可愛い」ってうるさくて大変だったんだから』
脳内で麗奈の声が再生される。
蓮くんは、私だけのものじゃなかった。
私に出会う前、あの人をあんなに愛おしそうに見つめて、私にくれるのと同じ、ううん、それ以上の熱い言葉を囁いていたんだ。
「紬? どうしたの、そんなところで」
「あ……っ、なんでも、ない!」
慌ててアルバムを閉じた私の手は、情けないほど震えていた。
戻ってきた蓮は、私の異変にすぐ気づいてアルバムに目を落とす。その瞬間、蓮の顔から血の気が引いた。
「これ、違うんだ! 中学のときの奴らが勝手に……! 紬、誤解しないで、俺は今、お前しか──」
「分かってる! 分かってるよ、蓮くん」
必死に私を抱きしめてくる蓮の胸の中で、私は涙を堪えるために唇を噛み締めた。
分かっている。蓮くんの愛は本物だ。だけど、分かっているからこそ、苦しい。
学校の廊下ですれ違うたび、麗奈は蓮にしか聞こえないような声で「蓮くん、陸上辞めても相変わらずモテるんだね」「あの怪我、本当に惜しかったよね」と、二人の『共有の思い出』をわざと匂わせてくる。
そのたびに蓮は、私の肩を痛いくらいに抱き寄せ、麗奈を睨みつける。
「馴れ馴れしくするな。俺に話しかけるなと言ったはずだ」
冷徹に突き放す蓮の横顔は、信じられないくらい格好いい。
──なのに。私の胸のモヤモヤは、消えるどころか大きくなる一方だった。
放課後、いつものように蓮の部屋で二人きりで課題をしていたときのこと。
蓮が飲み物を取りに席を外した隙に、私は見てはいけないものを見てしまった。
本棚の奥にひっそりとしまわれていた、中学時代の陸上部のアルバム。
そこには、今よりも少し幼い、だけど今と同じように眩しい笑顔の蓮と──その隣で、蓮の腕に抱きついて向日葵みたいに笑う、麗奈の姿があった。
『私のときも、毎日「可愛い」ってうるさくて大変だったんだから』
脳内で麗奈の声が再生される。
蓮くんは、私だけのものじゃなかった。
私に出会う前、あの人をあんなに愛おしそうに見つめて、私にくれるのと同じ、ううん、それ以上の熱い言葉を囁いていたんだ。
「紬? どうしたの、そんなところで」
「あ……っ、なんでも、ない!」
慌ててアルバムを閉じた私の手は、情けないほど震えていた。
戻ってきた蓮は、私の異変にすぐ気づいてアルバムに目を落とす。その瞬間、蓮の顔から血の気が引いた。
「これ、違うんだ! 中学のときの奴らが勝手に……! 紬、誤解しないで、俺は今、お前しか──」
「分かってる! 分かってるよ、蓮くん」
必死に私を抱きしめてくる蓮の胸の中で、私は涙を堪えるために唇を噛み締めた。
分かっている。蓮くんの愛は本物だ。だけど、分かっているからこそ、苦しい。



