「──紬!!」
太陽が去ってからわずか数分後、教室のドアが勢いよく開き、息を切らした蓮くんが飛び込んできた。
その端正な顔は恐怖と焦燥感で真っ青に染まっており、私の姿を見つけるなり、弾かれたように駆け寄って私を床から抱き起こした。
「ごめん、遅くなってごめん......! 何があった? なんで泣いてるの!? 床に座り込んで、誰に何かされた!?」
蓮くんの大きな手が、私の肩を壊れ物のように強く、強く抱きしめる。
彼の心臓が、まるで早鐘のようにうるさく波打っているのが伝わってくる。いつもの余裕に満ちた完璧な蓮くんは、どこにもいなかった。
「な、なんでも、ないの......。ただ、ちょっと目眩がして、アイツ......じゃなくて、転校生の後藤くんが、心配して声をかけてくれただけで......」
私は必死に声を震わせながら、最悪の嘘を口にした。
太陽の名前を出しそうになり、慌てて言葉を濁す。
蓮くんを護るため。
あの日、彼の陸上生命を奪ったのが太陽たちの罠だったなんて、今更知ったら蓮くんは本当に狂ってしまうかもしれない。
けれど、私のその『嘘』は、蓮くんの鋭い洞察力を誤魔化すにはあまりにも稚拙だった。
「嘘だ。紬、お前、今俺に嘘ついてるだろ」
蓮くんの声が、地を這うような低いトーンへと一瞬で変貌した。
私を抱きしめる腕の力が、痛いくらいに強くなる。骨がきしむほどの強烈な力。
蓮くんは私の顔を両手で挟み込み、無理やり自分の視線と合わせさせた。
その瞳は、暗い執着と独占欲で完全に濁りきっていた。
「なんでアイツの名前を出したの? なんでそんなに怯えてるの? 俺に言えないことって何? ......俺じゃ、頼りない? 俺じゃ、紬を護りきれないって言うの......?」
「ち、違うの! 蓮くんは優しくて、最高の彼氏で......!」
「なら全部話してよ!!」
蓮くんの怒号が、静まり返った教室に鼓膜が痛くなるほど響き渡った。
私はビクリと体を強張らせる。蓮くんは自分の取り乱した姿にハッとしたように目を見開いたが、すぐに狂おしそうな、今にも泣き出しそうな
歪んだ笑みを浮かべた。
「......ごめん。大声出してごめんね、紬。でも、お前が俺に隠し事をするなんて耐えられないんだ。俺、紬がいないと本当に生きていけない。お前が他の男の影を少しでも匂わせたら、俺、自分がどうなっちゃうか分からないんだよ......」
蓮くんは私の首筋に顔を埋め、縋り付くように激しく、何度も何度も私の名前を呼び続けた。
その過保護な溺愛は、今や完全に余裕を失い、私をどこへも逃がさないための『鎖』へと変貌しつつあった。
私を護るために、狂気に染まっていく最愛の彼氏、蓮くん。
私の過去を人質に、さらに深く、容赦なく私を追い詰めてくる元カレ、太陽。
お互いを想い合うがゆえの嘘が、私たちの完璧だった溺愛の形を、静かに、確実に狂わせていく──。
太陽が去ってからわずか数分後、教室のドアが勢いよく開き、息を切らした蓮くんが飛び込んできた。
その端正な顔は恐怖と焦燥感で真っ青に染まっており、私の姿を見つけるなり、弾かれたように駆け寄って私を床から抱き起こした。
「ごめん、遅くなってごめん......! 何があった? なんで泣いてるの!? 床に座り込んで、誰に何かされた!?」
蓮くんの大きな手が、私の肩を壊れ物のように強く、強く抱きしめる。
彼の心臓が、まるで早鐘のようにうるさく波打っているのが伝わってくる。いつもの余裕に満ちた完璧な蓮くんは、どこにもいなかった。
「な、なんでも、ないの......。ただ、ちょっと目眩がして、アイツ......じゃなくて、転校生の後藤くんが、心配して声をかけてくれただけで......」
私は必死に声を震わせながら、最悪の嘘を口にした。
太陽の名前を出しそうになり、慌てて言葉を濁す。
蓮くんを護るため。
あの日、彼の陸上生命を奪ったのが太陽たちの罠だったなんて、今更知ったら蓮くんは本当に狂ってしまうかもしれない。
けれど、私のその『嘘』は、蓮くんの鋭い洞察力を誤魔化すにはあまりにも稚拙だった。
「嘘だ。紬、お前、今俺に嘘ついてるだろ」
蓮くんの声が、地を這うような低いトーンへと一瞬で変貌した。
私を抱きしめる腕の力が、痛いくらいに強くなる。骨がきしむほどの強烈な力。
蓮くんは私の顔を両手で挟み込み、無理やり自分の視線と合わせさせた。
その瞳は、暗い執着と独占欲で完全に濁りきっていた。
「なんでアイツの名前を出したの? なんでそんなに怯えてるの? 俺に言えないことって何? ......俺じゃ、頼りない? 俺じゃ、紬を護りきれないって言うの......?」
「ち、違うの! 蓮くんは優しくて、最高の彼氏で......!」
「なら全部話してよ!!」
蓮くんの怒号が、静まり返った教室に鼓膜が痛くなるほど響き渡った。
私はビクリと体を強張らせる。蓮くんは自分の取り乱した姿にハッとしたように目を見開いたが、すぐに狂おしそうな、今にも泣き出しそうな
歪んだ笑みを浮かべた。
「......ごめん。大声出してごめんね、紬。でも、お前が俺に隠し事をするなんて耐えられないんだ。俺、紬がいないと本当に生きていけない。お前が他の男の影を少しでも匂わせたら、俺、自分がどうなっちゃうか分からないんだよ......」
蓮くんは私の首筋に顔を埋め、縋り付くように激しく、何度も何度も私の名前を呼び続けた。
その過保護な溺愛は、今や完全に余裕を失い、私をどこへも逃がさないための『鎖』へと変貌しつつあった。
私を護るために、狂気に染まっていく最愛の彼氏、蓮くん。
私の過去を人質に、さらに深く、容赦なく私を追い詰めてくる元カレ、太陽。
お互いを想い合うがゆえの嘘が、私たちの完璧だった溺愛の形を、静かに、確実に狂わせていく──。



