マネージャーの春河さんは細々とした事務作業や経理、契約の交渉等々、石彫以外てんでダメな私に代わって仕事をこなしてくれる有難い人だ。
彼女のおかげでここまで有名になれたと言っても過言じゃない。
だけど困ったことに、私を若くて綺麗で洗練された芸術家として売り出して、しかもそれが当たってしまったから仮面を被って人前にでなくてはならなくなった。
スタイリストだかネイリストだかよくわからない人たちに揉みくちゃにされ、「どこの女優さんですか?」と聞きたくなるような見た目に変えられてインタビューを受けるのは苦痛でしかない。
それでも、私を支えてくれた春河さんやギャラリーのオーナーさんの期待には応えたいし、ファンからの手紙は原動力になっている。
だから……こんなひっつめ髪をボサボサにして、ゴツくてデカい黒縁眼鏡をかけた前林紫緒がShionだとバレてはいけない。



