眠り続けろピグマリオン




 マグカップに淹れた緑茶の、湯気の向こうに。

 耳まで赤くした、真摯な表情の名古先生にそう問われてしまった。


「あの、それは」

「想像した通りの意味で受け取ってください」


 私はアイボリーのマグカップを見つめた。面倒で、プラスチックのグラスが一個しかなかったのを先生が見兼ねて買ってくれたものだ。

 マグカップだけじゃない。この家にはそこかしこに名古先生の指導の跡がある。生活を支えると息巻いていた春河さんに、「先生って人間らしい生活ができたんですね」と涙ぐまれてしまったほどだ。

 名古先生にバレた、とは絶対に言えないから「二回も倒れたら流石にね」と誤魔化してはいる。先生と付き合ったら、このまま騙されてもらうために──。


「よろしく、お願いします」

「……いいんですか?」

「さっきから色々考えてたんですけど……先生とお付き合いするのが前提になってました」


 先生は苦笑して、そうして私たちのお付き合いは始まった。